カプコンの株価が10年間で1,200%成長した軌跡[ブルームバーグ]
2018年9月22日(土)、千葉で開催中の東京ゲームショウで、株式会社カプコンブースのステージ前に集まる来場者。ショーは9月23日まで開催されている。

カプコンの株価が10年間で1,200%成長した軌跡[ブルームバーグ]

ゲーム業界がマイクロソフトとアクティビジョンの提携やAIの影響に注目する一方で、投資家たちはより小さなプレーヤーに注目するかもしれない。

(ブルームバーグ) -- ゲーム業界がマイクロソフトとアクティビジョンの提携やAIの影響に注目する一方で、投資家たちはより小さなプレーヤーに注目するかもしれない。

日本のゲームパブリッシャー、カプコンの株価は今年3分の1上昇し、東京証券取引所全体の上昇幅を上回っている。110億ドル規模のカプコンが、バイオハザードやモンスターハンターといったハリウッドのフランチャイズを生み出し、その重圧を乗り越えてきたからだ。

カプコンは、コナミグループからバンダイナムコホールディングスまで、多くの最大手ライバルを大きく上回るバリュエーションで取引されている。業界の売上の半分を占めるようになったスマートフォン向けゲーム分野で他社に遅れをとっているにもかかわらず、このような状況になっている。同社を担当するアナリストのうち、7人が「ホールド」、10人が「バイ」、1人が「セル」と評価している。

カプコンの株価は日系ゲーム企業の中で最高のパフォーマンス

カプコンは2,000億ドル規模のゲーム業界ではやや異色の存在だ。売上の約70%が前年度以前に発売されたゲームソフトによるもので、新しいコンテンツやアート、アドベンチャーに牽引されるのが一般的なゲーム業界では異例の高比率だ。アナリストによれば、大阪に本社を置く同社は、ゲームのバックカタログを大いに活用することで、大型新作に依存する収益変動のサイクルを断ち切ることに成功しているという。

ブラジル、サウジアラビア、トルコなど、サービスが行き届いていない発展途上の市場を開拓し、クラシックゲームを大幅に値引きしたことが功を奏した。10ドルで販売される旧作ゲームの利益率は事実上100%である。

UBS証券のアナリスト、福山健司は「カプコンは営業利益率とROIが非常に高く、日本以外では見られない」と語る。同社の売上総利益率は常に同業他社を上回っており、昨年の58.6%という数字は、スクウェア・エニックス・ホールディングス(51.2%)、コナミ(38.9%)、バンダイナムコ(37.2%)を圧倒している。

東洋証券アナリストの安田秀樹によれば、同社は230の国と地域でソフトを販売しており、これは日本のパブリッシャーの中で断トツの多さだという。3月期の4170万本から年間1億本の販売を目標に掲げている。

カプコン、豊富な既存IPを活用|売上の大半は前期以前のタイトル

カプコンは早くからゲーム機でヒットした旧作をPC向けにデジタルダウンロード販売することに取り組んでおり、それが今日のような有利な戦略を実現するのに役立っていると福山氏は語る。また、コンスタントな新作ヒットに依存するビジネスモデルが生み出す利益の大きな変動をスムーズにし、カプコンを投資家の憧れの的にしている。

シティグループ証券アナリストの山村淳子は、企業価値と利益を比較した場合、カプコンの株価は同業他社の中で最も割高であると指摘する。同社は3月、10年連続で営業利益を伸ばし、18%増の508億円を計上した。

山村は、「古いゲームの販売に焦点を当てた同社のビジネスモデルは、各ゲームの寿命を長くし、この業界で一般的な行動である、新しいゲームのリリース時に投資家が利益を得ることを抑制している」と述べ、目標株価を現在の5,683円に対し6,400円に設定した。また、カプコンは、慢性的な人手不足の業界において、自社で育てたクリエイターやエンジニアの人材が安定していることも大きな資産である、と山村は付け加えた。

Capcom has the highest EV/EBITDA ratio among Japan game stocks
Capcom 21.5x
DeNA 11.5
Bandai Namco 10.8
Konami 9.6
Sega Sammy 8.2
Square Enix 8.2
NOTE: Numbers based on forward blended estimates compiled by Bloomberg.

しかし、同社にとっての弱点は、成功に不可欠とされる創業者、辻本憲三(82)の高齢化である。東洋証券の安田によれば、カプコンの先駆的戦略は彼の先見の明によるところが大きいという。

カプコンにとってもうひとつの課題は、モバイル分野での躍進である。データトラッカーのNewzooによると、2022年の世界のスマートフォン向けゲーム市場の売上は918億ドルで、ゲーム機やPCを大きく引き離している。カプコンは、ポケモンGOの生みの親であるナイアンティックと共同開発した「モンスターハンターNow」を9月にリリースする予定である。

同社の最近のゲームパイプラインは、レビュー集計サイトであるメタクリティック(ゲーム評論家のレビューを加重平均して評価するサイト)で高得点を獲得している。PC版『Ghost Trick: Phantom Detective』は90点、『ストリートファイター6』は92点、『バイオハザード4』リメイクは93点だった。

しかし、カプコンの持続的な成功の鍵は、名作ぞろいのポートフォリオから安定した作品を生み出していることにある。

「カプコンは高品質のゲーム制作、バックカタログの収益化、マルチプラットフォームのパブリッシング、大阪の従業員の国際化に注力し、数年でロケット船に変身した」と業界アナリストのセルカン・トトは語った。

Monster Hunter Sees 1,200% Gain Over Decade

By Takashi Mochizuki and Yuki Furukawa

© 2023 Bloomberg L.P.

翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ

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