
ソフトバンク決算の見どころ:ArmのIPO計画とスタートアップの評価額
ソフトバンク・グループ(SBG)のビジョン・ファンド部門は、世界的なハイテク株の上昇を受け、木曜日の決算発表では四半期の損失が縮小するか収支が均衡する可能性がある。
(ブルームバーグ) -- ソフトバンク・グループ(SBG)のビジョン・ファンド部門は、世界的なハイテク株の上昇を受け、木曜日の決算発表では四半期の損失が縮小するか収支が均衡する可能性がある。
しかし、3四半期連続の巨額損失を上回るには十分ではないだろう。アストリス・アドバイザリーのカーク・ブードリーは、3月期は約4兆円の損失と予想している。
ビジョン・ファンドの投資先は未上場企業の割合が高いため評価が難しく、SBGの決算報告が最も良いバロメーターとなっている。投資家は今、出血が終わったかどうかに疑問を抱いている。
不採算の新興企業に対するリスク選好は依然として弱く、SBGの投資利益を計上する能力は低下している。創業者の孫正義は木曜日の決算説明会を欠席する予定で、最高財務責任者の後藤芳光が、チップ設計部門であるArmの新規株式公開(IPO)について話し、財務に関する不安を解消する役割を担っている。
以下、注目すべきポイントを紹介する。
ハイテク新興企業にとって最悪の事態は終わったのか?
昨年、SBGはインドのOyo HotelsからスウェーデンのKlarna Bankまで、知名度の高い未上場の新興企業への投資を縮小した。しかし、一部の投資家からは「十分な効果があったのか」と疑問の声が上がり続けている。
SBGは、Didi Global Inc.とGrab Holdings Inc.などの上場企業への投資について、評価損や利益を開示している。しかし、SBGが保有する数百社に及ぶ非上場企業については、その実態の開示は限られている。投資した新興企業の多くは赤字のままである。
焦点は、3月末時点の内部収益率(IRR)など、ビジョン・ファンドのパフォーマンスに改善の兆しがあるかどうかだ。ビジョン・ファンド1は、設立以来の累積リターンから投資額を差し引いた額が黒字化しただけで、ビジョン・ファンド2は12月末時点で約170億ドルの赤字だった。
SBGのバランスシートはどの程度強固なのか?
SBGが財務の健全性を示す指標として好んで用いるのは、Loan to value(LTV)である。この指標は、同社の負債残高と保有する全株式の現在価値とを比較したものである。
多額の負債を抱える同社は、金利上昇の影響を受けやすい。同社は、LTVを25%以下に抑え、少なくとも2年分の社債償還を賄えるだけの現金を保有することを方策に掲げている。この数値は12月期には18.2%となっている。
アナリストはしばしば1株当たり純資産価値(Net Asset Value Per Share: NAVPS)を使用する。保有株式の価値から純負債を差し引き、発行済み株式数で割って算出されるこの数値は、12月末時点で1株あたり9,472円であった。SBGはその半分強の水準で取引されている。モルガン・スタンレーMUFGは、40%から50%の持株会社ディスカウントが妥当と見ている。
ArmのIPOはどれくらいの規模になるのか?
半導体設計部門であるArmの業績は、今年後半に待ち望まれているIPOの成功、ひいてはSBGが再び攻勢をかけられるかどうかの判断材料となる。
ブルームバーグが以前報じたところによると、銀行団は上場時の評価額を300億ドルから700億ドルの間で提示しており、その幅は、不安定な半導体株価を背景にした同社の価値評価の難しさを反映している。
Armは12月期に前年同期比30%近い増収を記録しており、今後も増収を記録する可能性が高い。しかし、スマートフォンやPC市場全体の低迷が続くと幹部が警告するなど、一部のチップの先行きは不透明なままだ。
SBGのアリババ株はどれくらい残っているのか?
SBGのアリババ株は、ソフトウエア出版社、通信会社、世界最大のハイテク投資家というSBGの過去の変遷に資金を提供してきた。しかし、その資源は枯渇しつつあり、SBGが将来の事業展開のためにArmへの依存度を高めていることが明らかになった。
SBGは12月末時点で、中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディング・リミテッドの株式14%近くを保有していることが明らかになっている。しかし、実際には、その出資比率はもっと小さくなると推定される。
ブルームバーグの規制当局への提出書類の分析によると、SBGは今年、先渡契約を通じて、さらに73億ドルのアリババ株を売却しているとのことだ。ブードリーは、これにより3月末までにSBGが保有するアリババの未保有株が約3.8%に減少したと推定している。
SoftBank Earnings Put Arm IPO Plans, Startup Valuations in Focus
By Min Jeong Lee
© 2023 Bloomberg L.P.
翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ