日銀金融政策の点検・検証、8割が来年4月以降の実施予想-サーベイ
2022年11月15日(火)、東京で開催されたパリ・ユーロプレイス国際金融フォーラムで講演する日本銀行総裁の黒田東彦氏。。Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日銀金融政策の点検・検証、8割が来年4月以降の実施予想-サーベイ

日本銀行による大規模な金融緩和政策が長期化し、日本の経済・物価情勢にも変化が見られる中、エコノミストの8割は新たな正副総裁の下で来年4月以降に開かれる金融政策決定会合で金融政策の点検や検証が行われると予想している。

ブルームバーグ

(ブルームバーグ):日本銀行による大規模な金融緩和政策が長期化し、日本の経済・物価情勢にも変化が見られる中、エコノミストの8割は新たな正副総裁の下で来年4月以降に開かれる金融政策決定会合で金融政策の点検や検証が行われると予想している。

エコノミスト47人を対象に7-12日に実施した調査によると、日銀は大規模な金融緩和政策と2%の物価安定目標の在り方について点検・検証を行うべきだと84%が回答した。タイミングは、黒田東彦総裁の下で来年3月までに行うとの見方が6%、4月以降が79%となった。19、20日の会合では全員が金融緩和政策の現状維持を見込んでいる。

田村直樹審議委員は11月30日のブルームバーグとのインタビューで、「今後の物価や賃金、経済の動向を踏まえ、しかるべきタイミングで金融政策の枠組みや物価目標の在り方を含めて点検・検証を行うことが適当ではないか」と発言した。これに対して黒田総裁は6日の衆院財務金融委員会で「金融政策の枠組みについて具体的に論じるのは時期尚早ではないか」と答弁している。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、来年の春闘を踏まえても金融緩和策の出口が見通せない状況が続くとし、「新日銀総裁の下で、改めて物価目標の在り方や金融政策との関係性などについてできるだけ中立的な視点で検証を行い、政策に反映していくことが望ましい」と指摘。債券市場における機能度低下の是正を優先課題に挙げた。

エコノミストの多くが日銀による物価目標の達成を展望しておらず、点検・検証を踏まえて想定される政策対応に関する質問(複数回答可)では、政策金利のフォワードガイダンス(指針)の修正(26人)や長期金利の許容変動幅の拡大(22人)といった現行政策の枠組み内での修正を見込む向きが多い。利上げやイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の廃止との回答は1桁だった。

2%の物価安定目標の修正や政府との共同声明の見直しも少数にとどまった。野村証券の松沢中チーフストラテジストは、岸田文雄首相がアベノミクスの副作用の大きさを認め、物価・賃金の好循環において成果が出たとの認識の下で「政府・日銀が共有する2%インフレ目標の再検証に前向きな姿勢を見せるようであれば、日銀において政策修正の機運が一気に高まろう」と述べている。

海外経済の後退

来年の日銀にとっての最大のリスクを聞いたところ、50%が「先進国を中心とした海外経済の後退」を挙げた。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、来年に世界経済は後退局面に入ると予想し、「日銀は政策修正は行わないとみており、あえて政策の点検・検証は行わないと考えている」と指摘。東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストも「来年はグローバルな景気の本格的後退が必至とみており、利上げ方向の政策修正や正常化は2025年以降に先送りせざるを得ない」と述べた。

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