インドのEVブームが海外自動車メーカーに2度目の勝機を与えた
2023年1月13日(金)、インドのウッタル・プラデーシュ州ノイダで開催された「India Auto Expo 2023」の現代自動車のブースで、VR機器を装着した来場者がバーチャルドライブを体験。

インドのEVブームが海外自動車メーカーに2度目の勝機を与えた

インドではEVへの移行が進んでおり、従来のガソリン車では実績を上げられなかった自動車メーカーに再チャンスを与えている。

(ブルームバーグ) -- インドではEVへの移行が進んでおり、従来のガソリン車では実績を上げられなかった自動車メーカーに再チャンスを与えている。

高い税金、価格に敏感な消費者、厄介な物流の問題で、多くの外国自動車メーカーがアジア最大の経済大国の1つで成功するのは困難だった。1980年代から、大衆のための最初の手頃な価格の車となった象徴的な「マルチ・800」で有名なマルチ・スズキ・インディア・リミテッドのような地元企業の支配力を緩めることは困難だった。

しかし、EVの登場により、中国の上海汽車、ルノー、日産自動車、フォルクスワーゲンの現地法人であるMGモーターのような企業が、ようやく足場を固めることができるかもしれない。

MGモーターは、インド国内の乗用車市場のほんの一部を支配しているに過ぎないが、先月、インドで芽生えつつあるEVの分野でシェアを獲得する野心的な計画を発表し、2028年までにインドでの売上高の4分の3をEVでまかない、そのほとんどが純EVという新モデル4~5台を発表する予定だ。

MGモーターは、500億ルピー(約820億円)を投じて、インドでの生産台数を年間30万台にまで増やすEV製造用の第2工場を建設し、西部のグジャラート州にバッテリー組み立て装置を建設している。さらに、2〜4年後にインド企業が過半数を所有することを目指し、現地法人の100%持ち株を希薄化する予定だ。

2023のMGモーターブースの来場者。このイベントは1月13日に一般公開され、1月18日まで開催される。Photographer: Anindito Mukherjee/Bloomberg

インドの自動車市場ですでに一角を占める他の国際的な自動車メーカーも、EVシフトを利用して存在感を高めている。

5月、ヒュンダイ・モーター・インディアは、南部のタミル・ナードゥ州でEVのエコシステムに2,000億ルピーを投じると発表した。そのためには、年間17万8,000台の生産能力を持つバッテリーパック組立工場の設立、主要幹線道路に100カ所の充電スタンドの設置、2032年までの新型EVの導入などが予定されている。

グローバル企業の関心は、遅々として進まないインドのEVシフトに活力を与えるかもしれない。

BloombergNEFによると、昨年のEV販売台数はわずか49,800台で、乗用車販売台数380万台のうち1.3%を占めるに過ぎない。内燃機関自動車に比べてEVのコストが高いこと、公共の充電スポットが少ないことが普及を遅らせている(BNEFは最新のEV長期見通しで、2038年までに内燃機関[ICE]車販売の完全廃止を達成する可能性について、インドを「後発」のカテゴリーに分類し、2050年までに乗用車の純排出量をゼロにする軌道には乗っていないと指摘している)。

しかし、米中貿易摩擦が高まる中、世界の自動車メーカーは、その大きな成長の可能性と代替製造拠点として、インドを再検討している。ナレンドラ・モディ首相は、地政学的な変化を利用して企業を誘致し、スマートフォンから半導体まで、インドで生産することを奨励している。

欧州最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲンはその典型だ。フォルクスワーゲンは、10年後までにインドで乗用車ラインナップの30%を電動化し、来年には初のEV「ID.4」を発売する予定だと報じられていまる

2021年1月28日(木)、インドのニューデリーで行われたルノー・カイガーのスポーツ用多目的車(SUV)の発表。T. Narayan/Bloomberg

テスラも長い間対立していたが、先月上級幹部がインドを訪問し、部品の現地調達の可能性について話し合うなど、軟化しているように見える。また、テスラのサプライチェーンを中国以外にも多様化させるために、連邦政府関係者とインセンティブについて話したと、関係者は述べている。

ルノーと日産も、チェンナイにある製造工場の脱炭素化に加え、2つのEVを含む自動車ラインナップを拡充するため、インドに約6億ドルの投資を計画している。

しかし、多くの地元自動車メーカー(タタ・モーターズを除く)がまだ有意義な形でEVを受け入れていないことを考えると、外国勢に勝算はあると言えるでしょう。

EVs Are Offering Foreign Automakers a Second Chance in India

By Ragini Saxena

© 2023 Bloomberg L.P.

翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ

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