遺伝子治療は医療の奇跡にならなければならない
2018年7月4日(水)、東京のジェネシスヘルスケア株式会社の研究所でDNAサンプルを扱う技術者。日本では、年齢を重ね、病気のリスクについて答えを求める人が増える中、自宅でのDNA検査が普及し始めています。Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg.

遺伝子治療は医療の奇跡にならなければならない

エコノミスト(英国)
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2018年、13歳のとき、イーサン・ラルストンの視力がぼんやりし始めた。診断は壊滅的なものでした。彼は、失明に至るまで視神経の細胞を蝕む稀な遺伝子疾患、レーバー遺伝性視神経症(LHON)を持って生まれてきた。

アメリカとヨーロッパでは、1年に800件しか発症しないことを考えると、若いラルストンは非常に不運だった。しかし、別の見方をすれば、彼は幸運だったといえるかもしれない。フランスのバイオテクノロジー企業であるGenSightは、何年も前からLHONの遺伝子治療に取り組んでいた。この病気は、ND4と呼ばれる遺伝子の変異によって引き起こされ、体内の細胞が欠陥のあるタンパク質を作るようになる。LUMEVOQと呼ばれるこの治療法は、網膜と視神経の細胞に通常のND4を追加することで問題を解決しようとするものだった。2018年までにLUMEVOQは臨床試験に入っていた。診断後まもなく、ラルストンはその治療を受けた。

現在、彼の視力はほぼ正常に戻っている。彼はコンピュータで仕事をし、車を運転し、友人とボーリングに行くことができる。まるで、治ったかのようだ。

このような話はよく聞くようになった。2010年代の1年間は、遺伝子治療の承認は1件だけだった。この8月だけでも、血液の病気であるベータサラセミアと血友病aの2つが承認されたのである。細胞・遺伝子治療の国際的な業界団体であるAlliance for Regenerative Medicineによれば、1,369のグループがこのような治療法を開発しており、2,000以上の臨床試験が進行中であるという。そのほとんどは初期段階にあり、それ以上進展しないかもしれない。多くは患者の遺伝子を変更する必要のない細胞療法である。しかし、マサチューセッツ州ケンブリッジにあるバイオメディカル・イノベーション・センターの科学者によれば、現在進行中の臨床試験は十分であり、2030年までに40-50の新しい遺伝子治療が臨床使用として認可される可能性があるとのことである。

その多くは、がんとの闘いに使われることになるだろう。免疫系が癌と戦うために使うT細胞の一部を体内から取り出し、癌に特異的な形質を認識させる遺伝子を与えて元に戻すというのは、最もホットなアプローチの一つであるCAR-T療法の基本である(CARは「キメラ抗原受容体」の略である)。しかし、遺伝性疾患に取り組むものもたくさん出てくるでしょう。この急増が始まったという明らかな兆候がある。Alliance for Regenerative Medicineの代表であるジャネット・ランバートは、ヨーロッパとアメリカで今年承認される遺伝子治療の数は過去最高になるだろうと予想している(図表参照)。

DNAの中に何かがあるということが、その人の本質の一部とみなすことの略語になっているこの世界では、遺伝性疾患をこの方法で扱うことは本当に革命的なことに見える。最近の総説によれば、「現代医学において最も説得力のあるコンセプトの一つ」だそうだ。たった一度の治療で、10年以上、あるいは生涯にわたって恐ろしい症状を緩和することができるというのは、他の追随を許さない治療法である。

しかし、これには多くの課題がある。使用されている技術にはまだリスクがある。治療法そのものが莫大な費用を要する。さらに、いくつかの治療法は他の方法との厳しい競争にさらされる可能性があり、その中には同じように新しい方法もある。このような場合、遺伝子治療が解決しようとする疾患のいくつかは、より安価な方法で治療できるようになるかもしれない。

このことは、遺伝子治療が素晴らしいものであっても、裕福な国の少数の患者を治療するニッチな分野に追いやられてしまう可能性を示している。そうなれば、鎌状赤血球症など、より一般的な遺伝性疾患に苦しむ世界中の何百万人もの患者にとって、見通しが悪くなる。また、遺伝子治療が単一遺伝子の疾患だけでなく、より複雑な疾患にも対応できるようになる可能性もなくなるかもしれない。ラルストンの見通しを変えたような効果をより多くの人々が享受するためには、奇跡を起こす能力だけでは十分ではない。奇跡は、現在臨床試験が行われているようなエリート病院とはかけ離れた条件下でも適応できるような方法で、手頃な価格で生産されなければならない。

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