石炭への投資が急増し気候システムの「崩壊」が迫る
2020年10月13日(火)、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州ガネダで、ホワイトヘブン・コール社が運営するガネダ石炭取扱・前処理工場から石炭を輸送する貨物列車(写真)。 David Gray/Bloomberg

石炭への投資が急増し気候システムの「崩壊」が迫る

非営利団体Urgewaldが主導する調査によると、石炭産業は既存発電所の段階的廃止と新規投資の停止という公約を反故にしており、地球を「気候システムの崩壊」につながる軌道に乗せようとしているという。

ブルームバーグ

(ブルームバーグ)-- 非営利団体Urgewaldが主導する調査によると、石炭産業は既存発電所の段階的廃止と新規投資の停止という公約を反故にしており、地球を「気候システムの崩壊」につながる軌道に乗せようとしているという。

気候科学者の警告が「ますます悲惨になる」中、石炭会社の行動を明らかにするデータは「気が滅入るほど一貫している」と、Urgewaldのディレクター、ヘッファ・シューキングは言う。木曜日に発表された分析によると、石炭産業のほぼ半分が拡大しており、中国がその先頭を走っているとのことだ。

最も汚い化石燃料の継続的な拡大がもたらす壊滅的な影響を警告しているのは、非営利団体だけではない。ゴールドマン・サックス・グループのミケーレ・デラ・ヴィーニャは、ウォール街の銀行でEMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ)の天然資源調査を担当しており、石炭燃料の急増を気候変動に対する「大きな後退」と呼び、ヨーロッパの石炭とディーゼル燃料への依存が今年の冬を越えるかもしれないと警告を発している。

一方、科学者たちは石炭を取り上げ、世界が新たなプロジェクトに資金を供給し続ければ、気温上昇を臨界点の1.5度まで抑える望みはないと指摘している。国連の気候変動に関する政府間パネルは、排出量の増加が続けば、世界は1.5度の閾値の2倍以上の気温上昇に直面する可能性があると発表している。そうなれば、地球の大部分は人が住めなくなる。

いわゆるグローバル・コール・イグジット・リスト(GCEL)に含まれる企業の「大半」は、「気候システムの崩壊に向けて私たちを突き動かしている石炭資産を、まだ撤去するつもりはない」とシューキングは述べた。「本当の意味での移行には、明確で近い石炭撤退の時期が必要なのです」。

1,000社以上の石炭会社を調査したGCELによると、46%がまだ新しい石炭資産を開発していることがわかる。全体の5.3%に相当する56社だけが、石炭の撤退日を発表している。しかし、期限を決めている企業でさえ、「とんでもなく遅い」期限に落ち着いていると、Urgewaldは言う。

また、金融業界から石炭への資金流入も増えている。リクレイム・ファイナンスの推定によると、190の銀行や金融機関がいまだに石炭政策をとっていない。さらに272行が弱いか不十分な政策をとっており、効果的な出口戦略を持っているのは28行に過ぎない。

ブルームバーグがまとめたデータによると、2022年の最初の9カ月間で、銀行は石炭産業に260億ドルの融資と債券を提供し、2021年の同時期から36%増加した。そのほとんどは中国企業によるもので、中国証券と中国光大銀行が2大石炭債の引受先として挙げられている。

ロシアのウクライナ侵攻により、すべての化石燃料市場が混乱し、石炭は今年、復活を遂げた。国際エネルギー機関(IEA)は、最も汚い燃料である石炭の消費量は今年0.7%増加し、2023年には過去最高を記録すると予測している。

1年弱前、スコットランドで開催されたCOP26気候変動サミットで、各国政府は石炭の使用量を削減することを約束し、その場を後にした。来月エジプトで開催されるCOP27気候変動サミットでも、エネルギー危機、戦争、景気後退の見通しが協議に大きな影を落としている中、各国は再び顔を合わせる。

しかし、気候変動シンクタンクのE3Gは、石炭会社が削減の約束を果たすのはまだ遅くはないとしている。E3Gの石炭チームのリサーチ・マネージャーであるレオ・ロバーツは、「稼働を続ける石炭発電所の数は増えています」と言う。しかし、昨年のCOP26での公約が損なわれたわけではない、と彼は言う。

しかし、シューキングによれば、ほとんどの石炭産業が「移行していない」ことは明らかだ。

「新しい石炭プロジェクトを開発するか、既存の石炭資産の寿命を引き延ばしている」のだという。「遅らせることは、気候変動の新しい否定になるのです」。

John Ainger. Climate Systems ‘Breakdown’ Looms as Coal Investments Soar.

© 2022 Bloomberg L.P.

翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ