半導体の在庫調整は来年前半まで続くか

スマートフォン市場はいま、過去10年間で最も暗い四半期を迎えている。これに伴いスマートフォン向け半導体も在庫調整の時期に入った。来年の前半まで調整期間は続くとの見方が大勢だ。


台湾積体電路製造(TSMC)の7 ナノメートル(nm)プロセスの稼働率50%を下回っており、2023年前半まで以前の水準に戻ることはないだろう、と台湾エレクトロニクス紙DIGITIMESが、報じた。同紙が引用した業界関係者は台中のFab 15Bの7nmの稼働率が予想より低く、50%を割り込み、2023年の第1四半期には稼働率は悪化する見込みという。

7nmと6nmの最大の用途は、スマートフォン、PC、サーバー、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)である。特に携帯電話やPCのサプライチェーンにおける高い在庫水準が注文調整の要因だと業界関係者は主張している。

これは先月の同社の発表を裏付ける情報である。TSMCの魏哲家最高経営責任者(CEO)は10月中旬の業績説明会で、スマートフォンやパソコンなどの末端市場の需要の弱さに加え、顧客の製品スケジュールの遅れにより、7nmプロセスで生産されるN6とN7の設備投資計画を調整したと説明した。先述のDIGITIMESの関係者も、2024年の操業開始後は7nmと28nmのチップを生産する予定だった高雄のFab 22の計画は、情報筋によると無期限に棚上げされた、と話している。

魏CEOは半導体サプライチェーンの在庫水準について「2022年第3四半期にピークを迎え、第4四半期(10~12月)には減少に向かう」としつつ、「健全な水準に至るまでの在庫調整期は2023年上半期まで続く」との見方を示していた。

Canalysの最新スマートフォン市場分析によると、2022年第3四半期の需要低迷により、世界のスマートフォン出荷台数は前年同期比9%減の2億9,780万台となった。CanalysのアナリストToby Zhuは第4四半期について「過去10年間で最も暗い第4四半期の見通し」と表現している。

「上流のサプライチェーンは予想よりも早く長い冬を迎え、OEMの注文目標が大幅に削減されています…ベンダーは、第4四半期を迎えてもなお続く難局に対処するため、慎重な戦略をとっています。過去10年間で最も暗い第4四半期の見通しを管理することで、どのベンダーが長期的に有利な立場にあるかが分かるでしょう」

実際、DIGITIMESの報道によると、MediaTek、AMD、Qualcomm、Apple、Intel等のIC設計顧客は、TSMCの7nmプロセスの注文を減らしているという。スマートフォン向けシステム・オン・チップ(SoC)設計の最大手であるQualcommは、スマートフォンの在庫水準の深刻さを警告し、近い将来について保守的な見方をしている。

スマートフォン向けSoC大手の台湾企業MediaTekはエントリーおよびミッドレンジのスマートフォンの在庫水準が高いせいで、市場低迷の影響をより強く受けている。第4四半期の業績は前四半期比20%減となる見通しだ。DIGITIMESの情報筋は、MediaTekが今回のファウンドリ受注削減の波の中で最大手の1社であると指摘した。

ただ、いずれ春は来ると考えられる。在庫調整後は、再び先端半導体への需要は復活すると見込まれる。2023年から、TSMCはAppleの最新Macシリーズを大量に受注し、iPhoneとiPadの受注は安定的に推移するという見通しで、在庫が解消されれば、Broadcom、Marvell、MediaTekなどのグローバルなIC設計の顧客がTSMCへの発注を拡大する、とDIGITIMESの情報源は予想している。