リチウム大国チリ、地場産業育成のため日本に働きかけ[ブルームバーグ]
世界最大のリチウム埋蔵量を誇るチリは、日本の電池会社や金属会社が、原料の付加価値向上や技術移転と引き換えに、リチウムへの長期的な優遇措置の獲得に関心を寄せていると明らかにした。
![リチウム大国チリ、地場産業育成のため日本に働きかけ[ブルームバーグ]](/content/images/size/w1200/2023/10/402918041.jpg)
世界最大のリチウム埋蔵量を誇るチリは、日本の電池会社や金属会社が、原料の付加価値向上や技術移転と引き換えに、リチウムへの長期的な優遇措置の獲得に関心を寄せていると明らかにした。
鉱業界の重鎮であるチリは、加工・製造能力の開発を支援してくれる企業を口説き落としたいと考えている。4月には、中国のEVメーカーであるBYDに対し、同国北部に建設される正極工場で使用するため、世界第2位のリチウム生産者であるSQMが生産する炭酸リチウムの優待価格での入手を許可した。

チリにあるアルベマールのリチウム鉱山からのリチウム引取は、来年にも同様の取引が可能になる予定だ。チリのニコラス・グラウ経済相は、SQMの生産契約が2030年までであるのに対し、アルベマールの契約は2043年までであるため、入札者にとって優遇価格の確実性が高まり、より競争的なプロセスを意味すると述べた。
「電池メーカーはリチウム抽出プロセスの一部になりたがっています。その理由はただひとつ、確実な供給を得るためです」と、ガブリエル・ボリッチ大統領とともに中国に向かう前の東京でのインタビューでグラウは語った。韓国でもロードショーを予定している。「この方がずっとシンプルだ。リチウムを手に入れるのに、3年も5年も待つ必要はありません」。
住友商事、三井物産、双日など、バッテリーやEVのサプライチェーンに関わる企業との会談後、グラウは日本企業が投資に「かなり興味を持っている」と述べた。
日本の大手バッテリーメーカーや自動車メーカーは、イーロン・マスク率いるテスラやBYDと競合するため、次世代バッテリーの開発に多額の投資を行っている。
パナソニック・ホールディングスは、カナダ初の北米製EV用リチウムイオン電池サプライチェーンの構築に向けて前進していると述べた。日本とカナダの当局者は先週オタワで会談し、EVサプライチェーンに関する協定に署名した。
クリーンエネルギーのサプライチェーンの多様化を目指し、チリと自由貿易協定を結んでいるアメリカや中国からの投資を誘致する取り組みについて尋ねられたグラウは、チリはその不可知論的なアプローチを利点と考えていると答えた。
最大の銅生産国であり、第2位のリチウム供給国であるチリは、活況を呈している電池材料需要を最大限に活用しようとしているが、時折市場を動揺させている。ボリッチ政権が今年初めに発表した計画では、戦略的に重要であると考えられるリチウム事業の支配的株式を国が取得する案が概説されており、生産量を増加させ、採掘をより持続可能なものにするという2つの目標が掲げられている。
それでも政府は、SQMとアルベマール(チリで唯一の2つのリチウム鉱山会社)の既存の契約を尊重し、非戦略地域のプロジェクトについては民間企業が支配権を保持することを認めるとしている。当局が新たな生産地域を特定すれば、探査契約の入札は来年行われる予定だ。
契約があと7年しか残っていないため、SQMは国営のコデルコ(チリ銅公社)と官民モデルの下での新たな取り決めについて協議に入った。どのような契約であれ、コデルコが過半数の株式を取得することになるだろうが、理想的には両社がジョイントベンチャーを設立し、「同様の方法で操業に参加する」ことになるだろう、とグラウは述べた。両者とも、操業中断を避けるために合意に達することに関心を持っている、とグラウは述べた。
同大臣は、チリはコスト面で有利であるにもかかわらず、(鹹水鉱床からのリチウムは炭酸リチウムへの加工が容易であるにもかかわらず)オーストラリアを含む他の国々は、需要の高まりに対応するため、より早く進歩を遂げているとの懸念を否定した。
「適切な人材を集める必要がある」とグラウは言う。「私たちの考えでは、他国との競争ではなく、いかにうまくやるか、いかに適切な人材を惹きつけ、私たちが持つ大きなチャンスを生かすか、ということなのです」。
- 取材協力:ショウコ・オダ、ニコラス・タカハシ
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翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ