次世代の太陽電池はどれだ?

太陽電池が世界的なブームを迎える中、メーカーや研究者の間では、電力変換効率が高かったり、コストが低かったりする素材や製法の模索が続いている。


太陽電池は太陽光エネルギーを直接電気に変換する。その種類は、使用される素材により異なるが、現在大量生産されている太陽電池の大部分は「シリコン系太陽電池」に分類される。この太陽電池は耐久性が高く、変換効率が高い特徴を持つ一方、材料や製造のコストが比較的高いという欠点もあった。

現在、シリコンの新しい製法を模索する動きがある。その1つは、シリコン系太陽電池の次世代と目されるN型太陽電池だ。TOPCon(トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト)やHJT(ヘテロ接合)、IBC(バックコンタクト)などが提案されているN型セル技術は、現在の主流技術であるPERC(Passivated Emitter Rear Contact)との激しい競争に突入している。

中国の太陽電池大手LONGiは5月下旬、同社の新型電池が31.8%の電力変換効率を達成したと発表した。この新製品は、N型TOPConに分類されるという。

太陽電池大手のトリナ・ソーラーは3月、N型TOPCon太陽電池モジュールを発表した。最大変換効率は21.8〜22.3%で経年劣化を抑え、生涯発電量が大幅に増加すると唄う。

太陽電池大手JinkoSolarのN型TOPCon太陽電池は、量産ベースでは変換効率が25.4%以上に達し、目標は25.8%という。

別種のN型太陽電池も試されている。昨年11月、LONGiは、フルサイズのシリコンウェハーを用いた不特定多数のHJT太陽電池が、26.81%という世界最高水準の変換効率を量産で達成したと発表した。この結果は独ハーメルン太陽エネルギー研究所(ISFH)で確認されたとしている。日本のカネカが長年保持していた変換効率の記録を更新し、話題となった。5月初旬に科学誌Nature Energyにこの電池に関する論文を出版した。

また、素材を変えることも選択肢に入っている。ペロブスカイトはシリコンの後継者と目されることもある素材だ。ペロブスカイト膜はスピンコートという技術を用いて容易に製造することができるため、現存する太陽電池よりも低コストになる可能性がある。さらに、そのフレキシブルで軽量な特性は、新たな形状の太陽電池の実現を可能にし、シリコン系太陽電池では設置が難しい場所にも設置が可能だ。

研究室レベルでは、電力変換効率がすでに高いレベルに達しているにもかかわらず、安定性の低さはペロブスカイト電池(PSC)の商業化を妨げる大きな課題である。現在、シリコン系との組み合わせは模索されている選択肢の1つだ。

ドイツの材料系研究所Helmholtz-Zentrum Berlin für Materialien und Energie(HZB)は、2022年12月19日に、PSCとシリコン系太陽電池を組み合わせた「PSC-on-Si型」のタンデムセルを用いて、変換効率32.5%を達成したと発表した。

太陽電池メーカーのOxford PVは5月下旬、商業規模の太陽電池で最大変換効率28.6%という記録を打ち立てたと発表した。ドイツの太陽光発電研究所Fraunhofer Institute for Solar Energy Systemsが測定。Oxford PVの技術は、シリコン系太陽電池にペロブスカイトの薄い層を塗布してパネルに組み込むものだ。