中国、大規模金融緩和なお慎重-先行き不透明でもリスク抑制に軸足
中国税関職員が、日の出とともに陸家嘴金融街のビル前の外灘沿いで行われる国旗掲揚式のリハーサルで中国国旗を掲げる(2022年1月4日火曜日、中国・上海にて)。Qilai Shen/Bloomberg

中国、大規模金融緩和なお慎重-先行き不透明でもリスク抑制に軸足

中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は大規模な金融刺激策を控えてきたが、この戦略を今後も堅持できるか、中国の不動産市場危機が試そうとしている。

(ブルームバーグ):中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は大規模な金融刺激策を控えてきたが、この戦略を今後も堅持できるか、中国の不動産市場危機が試そうとしている。

易総裁はこの数週間で、中期貸出制度(MLF)の1年物金利を引き下げたほか、資金繰り難にある不動産開発業者に対して政策銀行経由の特別融資を発表。国有銀行には与信拡大を求めた。また、預金準備率の引き下げ観測も広がっている。

こうした矢継ぎ早の措置でも軸足を置くのはなおリスクの抑制で、李克強首相と国務院(政府)の慎重な政策方針と整合的だ。

中国、不動産市場の安定急ぐ-ローンプライムレート引き下げ

人民銀に関する共著もあるグリフィス大学のフイ・フォン上級講師は、「人民銀が通らなければならないギリギリのラインだ」と指摘。「景気は低調に推移しているが、金融刺激策を講じても中国経済のレバレッジを高めるだけで、コストが利益を上回るのではないかと人民銀は懸念している」と話す。

共産党の習近平総書記(国家主席)が慣例破りの党トップ3期目を決める見通しとなっている党大会が近づく中、不動産市場の低迷や新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策による消費への影響など、経済面の課題が山積している。

「中国の夢」実現も正念場-共産党トップ3期目狙う習氏に難題山積

易総裁は最近、景気下支えのため金融政策を今後も「緩和的」とする方針を示したが、これにも自ずと限界がある。同総裁は過去に量的緩和に反対する主張を展開したほか、大幅な利下げも避けており、より的を絞った手段を選好している。

習氏は制限なき経済成長よりも国家安全保障の確保や格差是正、社会の安定維持などが優先される「新たな発展段階」に中国が入ったと主張しており、易総裁の慎重姿勢も同一線上にある。

習氏の新たな方針を踏まえると、2008年の世界金融危機時などのように、人民銀が大規模な刺激策に乗り出す公算は小さい。そのような措置を講じれば、不動産業界や地方財政、シャドーバンキング(影の銀行)、家計部門、大手コングロマリットなどに広がっていた債務問題への対処を巡るこの5年間の進展を台無しにしてしまう恐れもある。

そもそも易総裁が大型の緩和策を講じたかったとしても習氏が認めなければ実現しない。人民銀はマネーサプライや金利に関して大きな決定を下す前に国務院の承認も必要だ。また、人民銀の党トップである党委員会書記は銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の郭樹清主席が務めており、党委副書記の易総裁が担当するのは日常の業務だ。

原題:PBOC Embraces Stimulus Lite Even as China’s Outlook Darkens(抜粋)

--取材協力:Tom Hancock.

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