外国人会員権8400万円、シンガポール名門ゴルフ場が今年人気の投資先
株や債券から暗号資産(仮想通貨)に至るあらゆるものが値下がりした今年、人気の投資先となったのがシンガポールの名門ゴルフクラブ(GC)だ。

株や債券から暗号資産(仮想通貨)に至るあらゆるものが値下がりした今年、人気の投資先となったのがシンガポールの名門ゴルフクラブ(GC)だ。
シンガポール海峡を見下ろす「セントーサGC」(36ホール)の外国人会員権は2019年末から2倍以上の84万シンガポール・ドル(約8400万円)に急騰。国民・永住者向けの会員権も50万シンガポール・ドルに跳ね上がっている。会員権ブローカーのシンゴルフ・サービシズがまとめた。
株価下落や中国の厳格な新型コロナウイルス規制、ロシアのウクライナ侵攻などで2022年に世界は大きな打撃を受けたが、シンガポールでは多くの資産が値上がりしている。不動産市場では優良物件がかつてないほどの高値水準で、高級車販売は絶好調、ゴルフ場も大盛況だ。
アジア代表する金融ハブのシンガポールは、隅々まで整備された都市国家で治安も良い。中国人を筆頭に、各国の資産家が続々とこの国に資金を投じている。こうしたトレンドを顕著に示しているのがセントーサGCだ。

シンガポール南部に位置する緑豊かなセントーサ島のこのゴルフ場は、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ」やカジノ、カリブ海からの外洋ヨットも寄港するマリーナにも近い。ベントレーやメルセデス・ベンツ、ロールス・ロイスのセダンに乗ってやって来るセントーサGC会員は金融界の着飾った富裕層が中心だ。
「超富裕層の中国人にとっては、はした金かもしれない」とパブリックゴルフ場のマリーナベイでインストラクターを務めるリップ・ウーイ氏は言う。「ゴルフクラブを探していて、最高のクラブでしか楽しみたくないと思うスーパーリッチは、もちろんセントーサGCに行くだろう」と指摘する。
セントーサGCはこの記事に関するコメントを控えた。
セントーサGCの会員権が値上がりし始めたのは、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)期だ。コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)の息苦しさを逃れたいゴルフ愛好家が注目。名声に引かれ中国本土からだけでなく、日本や韓国など海外勢の間で人気が高まっている。
シンゴルフ・サービシズのオーナーで1991年からゴルフ場会員権ブローカーをしているリー・リー・ラングデール氏は「セントーサはその名前ゆえに人気だ。リッチな有名人たちのためのゴルフ場だ」と話す。「本土から来た多くの中国人もセントーサの近くに住んでいる」のだそうだ。

税金の安さで知られるシンガポールは、アジア各地から富裕層を引き付ける。資産家の富を管理・運用するファミリーオフィスが急増し、21年末時点でシンガポールに約700。そのけん引役はなんと言っても、中国本土から移リ住む中国人だ。
超富裕層は以前、シンガポールをビジネスの拠点と見なしていた。だが今は多くの中国富裕層にとって、家族で住む場だ。
別の会員権ブローカー、アクティブ・ゴルフ・サービシズのマネジャー、マデレン・チョー氏は「パンデミック前には見られなかった巨大な需要がある」と述べ、外国人は「シンガポールに非常に長期にわたり滞在するつもりで、会員権を購入する必要がある」と説明する。
ただ、ラングデール氏によると、「かなりの数の外国人が100万シンガポール・ドルで会員権が売れるのを待っている」という。「何であれ上がったものは、必ず下がる。値下がりは時間の問題」というのが同氏の見立てだ。
原題:Ultra-Rich Chinese Drive Premier Singapore Golf Fees to $618,000 (抜粋)
By Daniel Flatley and Emily Birnbaum
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