![EUが気候変動目標を達成するためには、EVが不可欠かもしれない[英エコノミスト]](/content/images/size/w2640/2023/05/398643843--1-.jpg)
EUが気候変動目標を達成するためには、EVが不可欠かもしれない[英エコノミスト]

4月最後の週末、中国の電気自動車(EV)メーカーであるNIOのベルリンのショールームは、幸せな空間だった。1階では家族連れが子供の誕生日パーティーを祝っていた。1階には、SUV、サルーン、レーシングカーが展示され、車好きの人たちが見学していた。価格は乗用車が5万ユーロ、SUVが7万5,000ユーロと高いが、メルセデスやBMWといったドイツのライバル車と比べると、かなり安く感じられる。バッテリーは付属していない。容量に応じて1万2,000ユーロか2万1,000ユーロで購入するか、レンタルする必要がある。
多くの欧州人にとって、EVはまだ手の届かない存在だが(平均的なガソリン乗用車の価格は約28,000ユーロ)、EVの販売は急成長を続けている。欧州自動車工業会(ACEA)によると、昨年、欧州連合(EU)で登録された自動車のうち、完全なバッテリー駆動の自動車は12.1%を占めたが、2021年にはEVは9.1%、2019年にはわずか1.9%にとどまった。より広いカテゴリーである代替動力車(APV)は、純粋なEVとプラグインおよび非プラグインのハイブリッドをひとまとめにしたもので、2022年の最終四半期には、合計130万台以上が登録され、欧州の自動車市場の半分以上を占めた。APVが純粋な炭化水素エンジン搭載車を上回ったのは初めてのことだ。
「EUはEVの導入において世界のトップランナーである」と、コンサルタント会社マッキンゼーの昨年11月の報告書は述べている。EUの加盟国は、それ自体が世界のEV生産の4分の1以上を担っており、EVの輸入も盛んだ。先進的な自動車メーカーと早期導入の消費者は、世界をリードするEVエコシステムを構築し、新たな雇用を創出し、気候変動目標への進展を加速させることができる、そうマッキンゼーは熱く語っている。
しかし、EVの未来を阻む最大の障害は、自動車の販売台数の増加に追いついていない充電インフラである。ACEAによると、2016年から2022年にかけて、欧州におけるEVの販売台数は、設置された充電ポイントの数の約3倍の速さで増加したという。
人々に電力を
2050年までにカーボンニュートラルを実現するというEUの野心的な目標でEVがその役割を十分に果たすためには、EUは公共充電ポイントの数を約30万から少なくとも340万、2030年には最大680万まで増やす必要があると、マッキンゼーの別の報告書は述べている。これは大変なことだ。2030年まで、1週間あたり最大1万4,000台の充電ポイントを設置する必要がある、とACEAは述べている。現在、その数は週に2,000に過ぎない。
さらにEUは、充電器をより均等に配置し、支払いシステムを調和させ、貨物車用の急速充電ポイントをより多く提供する必要がある。現在、EUの充電ポイントの半分は、オランダ(9万カ所)とドイツ(6万カ所)にある。オランダの6倍の面積を持つルーマニアのような大国には、欧州全体の充電ポイントの0.4%しかない。
充電インフラにおける不均衡は、EVのコストを反映している。EVの市場シェアは、税引き後の平均所得が年間3万2,000ユーロの北欧・西欧諸国と、その半分以下の南欧・東欧諸国とでは、はるかに高いのだ。しかし、リチウムや電池の生産に必要なその他の材料の世界的な価格の低下、政府の補助金、生産量の急増によるスケールメリット、特に中国メーカーとの厳しい競争などにより、EVの価格は一部の予測よりも早く下落している。「2025年か2026年には、ほとんどの自動車メーカーがガソリン車とEVを同じ価格で製造できるようになるでしょう」と、Bernstein ResearchのDaniel Röskaは予測している。現在、フォルクスワーゲンの人気モデルである「ゴルフ」のガソリンエンジン車は、同サイズのEV車よりも約3,500ユーロ安く製造されている。