アリババなどの米上場中国企業、米当局の会計監査が迫る

米国の規制当局は、米上場の中国企業の米国法への適法性、会計の正当性を確かめるための取り組みの一環として、来月アリババ、ネットイースなどの監査を検査する予定だ。


ブルームバーグが引用したこの問題を直接知る2人の関係者によると、他に選ばれたのは百度、JD.com、Yum Chinaなどだ。公開会社会計監視委員会(PCAOB)は、最新の会計年度の資料を監査することを要請したと、関係者の1人が述べた。このリストはまだ変更される可能性がある。

アリババは8月22日に「外国企業説明責任法(HFCAA)」(2020年成立)の暫定リストに加わった企業だ。この4日後に中国側の譲歩があり、今回の監査につながっている。

HFCAAは、米国の証券取引所に上場する外国企業に関して、外国政府の支配・管理下にないことの立証義務を課すとともに、PCAOBが監査を実施できない状態が3年連続で続いた場合、当該企業の証券取引を禁止する内容となっている。

この監査はPCAOBと中国当局との間の合意を踏まえたものだ。PCAOBは8月26日、中国証券監督管理委員会と中国財政部との間でプロトコル声明に署名し、PCAOBが中国本土および香港に本社を置く登録会計事務所を米国の法律と完全に一致させて検査・調査するためのアクセス開放に向けた第一歩とした。

この協定は、ニューヨークで上場している中国企業の監査書類をめぐって、両国の規制当局が10年来にらみ合いを続けてきた結果、数十カ月にもわたって交渉されたものだ。米中両国が貿易や人権などの問題で対立している中で、北京が珍しく譲歩したように見える。

この合意により、PCAOBの検査官が香港や中国本土に出向いて検査することが可能になった。PCAOBは外国企業説明責任法(HFCAA)に中国と香港の会計事務所が適合しているかどうかを年内に判断する予定である。

中国はこれまで、国家安全保障を理由に、米国規制当局が企業の監査報告書に定期的にアクセスすることを拒否してきた。

また、アリババを含む米上場の中国企業は、米上場を可能にするため、変動持分事業体(VIE)と呼ばれる複雑な企業構造を採用していることも俎上に上がるかは注視に値するだろう。

VIEではケイマン諸島のようなカリブ海のタックスヘイブンに持株会社が作られ、香港経由でつながった本土の事業体との契約により支配関係を構築する。持株会社の米預託証券(ADR)が米株式市場に上場され取引されている。国内の外資規制を回避し、国際的な投資家から数十億ドルを調達するため、アリババ、ネットイースのような米上場の中国企業はもれなくこの仕組みを採用しており、中国政府は長い間黙認してきた経緯がある。

中国、海外上場の「抜け穴」を正式に禁止へ
中国はテクノロジー新興企業における外国人株主の役割を制限するために、同国の新興企業が海外で上場する際に利用する主要な経路である変動持分事業体(VIE)を厳しく制限するブラックリストを準備している。