米国防総省の小型原子炉プロジェクトが進展[ブルームバーグ・グリーン]

次世代の原子炉は、標準的な輸送用コンテナに収まるように設計され、トラックで配送されるようになっている。BWXテクノロジーズは、現在商業的に広く使用されている巨大な従来型の1%以下の大きさの米軍向け移動炉を開発中だ。

米国防総省の小型原子炉プロジェクトが進展[ブルームバーグ・グリーン]
2023年4月21日(金)、米バージニア州アーリントンにあるペンタゴンビル。

(ブルームバーグ) -- 次世代の原子炉は、標準的な輸送用コンテナに収まるように設計され、トラックで配送されるようになっている。

潜水艦や空母の動力源となる原子力システムを供給する防衛請負業者、BWXテクノロジーズは、現在商業的に広く使用されている巨大な従来型の1%以下の大きさの米軍向け移動炉を開発中だ。

プロジェクト・ペレは、原子力産業を再構築する取り組みの最前線にある。数多くの企業が、工場で生産され、現地で組み立てられる小型発電所を設計している。この戦略により、より早く、より安く建設することができると期待されている。これらの企業はすべて、まだ長い商業的規制のプロセスを経ていないため、10年以内に彼らのシステムが実用化されることはないだろう。BWXは軍と協力しているため、別の承認プロセスを経ており、最初のシステムが早ければ2025年に発電できる可能性がある。

BWXの先端技術部門のプレジデントであるジョー・ミラーは、「私たちがやっていることは現実的なことだ」。

ハワイの火山の女神にちなんで名付けられたプロジェクト・ペレは、バージニア州リンチバーグ郊外の静かな田舎町で具体化しつつある。同社は、小型原子炉の建設が予定されている森の中の2車線道路沿いに、何の変哲もない工場を建設中だ。

訪問者のセキュリティをクリアすると、ミラーは輸送用コンテナの枠にぴったりと収まった実物大の木製モックアップを見せながら、興奮気味に語った。銀色に輝くソーダ缶を横倒しにしたような原子炉の詳細がわかる実物大のレンダリングもある。しかし、国家安全保障上の懸念と、同社が設計を保護するためもあり、撮影は禁止されている。

BWXは、来年初めまでに政府から設計の最終承認を受ける予定である。2025年にはアイダホ国立研究所に実用版を納入し、約2年間のテストを行う予定だ。完成すれば、遠隔地の基地への電力供給から災害救助任務の支援まで、あらゆる軍部で利用できるようになる。軍が小型原子炉に関心を持つ背景には、気候変動がもたらすリスク、つまり悪化する異常気象に迅速に対応する必要性がある。

カリフォルニア州オークランドを拠点とする研究グループ、ブレークスルー・インスティテュートの原子力イノベーション担当ディレクター、アダム・スタインは、「ほとんどどこにでも空輸できる原子力発電所というアイデアは、技術の進歩を示しています」と語る。現在稼働している商業用原子炉は、建設に何年もかかる大規模なプロジェクトで、通常1ギガワット程度の容量がある。それに比べ、プロジェクト・ペレのシステムは1〜5メガワットの容量になる(国防総省は安全上の理由から曖昧にしている)。

次の波は、原子エネルギーが、威圧的な電力源というよりも、エネルギー商品として受け入れられつつあることを示すものだ。スタインは、「今や、箱の中に入れておくだけのものだ」と言う。このことは、小型原子力発電所を電気と熱の供給源として利用できる工場など、他の環境での利用にも道を開くことになる。「私たちは、この分野で絶対的な実力をつけているのです」と、スタインは付け加えた。

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