トヨタ除外の「忖度なき東証新指数」、海外マネーに期待と懸念[ブルームバーグ]
東証外観。出典:ブルームバーグ。

トヨタ除外の「忖度なき東証新指数」、海外マネーに期待と懸念[ブルームバーグ]

日本を代表するトヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)ですら除外された東京証券取引所の新たな株価指数の算出が3日、始まった。

(ブルームバーグ):日本を代表するトヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)ですら除外された東京証券取引所の新たな株価指数の算出が3日、始まった。プライム市場の中で厳しい採用条件に合格し、稼ぐ力に優れた150社は海外マネーのさらなる呼び水になると期待される半面、グロース(成長)銘柄に偏った構成を懸念する声も出ている。

「JPXプライム150」はプライム市場の時価総額上位で資本収益性に優れ、同時に株価純資産倍率(PBR)が1倍を超す150銘柄で構成された新指数だ。東証が進める企業価値向上策の一環で導入され、5月公表の選定銘柄からは時価総額日本一のトヨタやメガバンクのMUFG、三井住友フィナンシャルグループなどが漏れた。

野村アセットマネジメントの石黒英之シニア・ストラテジストは、過去の日本の株価指数は知名度の高い企業を組み入れるのが常だったが、今回は「忖度(そんたく)されていない今までになかった指数」だと評価。日本や世界の変化に対応できる企業が入り、「米S&P500種株価指数に近い」とみている。トヨタなど除外企業にとっても「指数に入るモチベーションにつながる」と言う。

初日のプライム150は1062.28で取引を開始し、一時1068.64まで上昇。終値は1067.96だった。同指数は基準日の5月26日を1000ポイントとして算出し、銘柄入れ替えは年1回、8月(初回は2024年8月)に行う。

東証を傘下に置く日本取引所グループ(JPX)によると、構成銘柄の株主資本利益率(ROE)中央値は15%とS&P500の15%、ストックス欧州600の14%とほぼ同じ。1株利益の成長率は11%と米欧指数の7.9%を上回る。

JPXプライム150の指数構成ウエート上位

 企業名(コード)ウエート(%)
ソニーG(6758)5.7
キーエンス(6861)4.2
NTT(9432)3.2
東エレク(8035)2.5
日立(6501)2.4
武田薬(4502)2.4
第一三共(4568)2.4
任天堂(7974)2.3
HOYA(7741)2.2
信越化(4063)2.2

出所:JPX、ウエートは5月26日時点


指数を開発したJPX総研のインデックスビジネス部統括課長の橋本元洋氏は、欧米指数と比べても質的に遜色がなく、銘柄数はプライム市場の1割程度でも時価総額では約5割に達すると説明。稼ぐ力と規模感のある企業がさらに成長しないと日本経済や株式市場の活性化は難しく、「欧米市場を引っ張る『GAFAM』のように日本でも150が引っ張ってほしい」と述べた。

もっとも、プライム150が持続的に国内外の投資家に受け入れられるかどうかは未知数だ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真チーフ・ポートフォリオストラテジストは、結果的に採用銘柄は「超大型グロース株のスマートベータのような顔ぶれ」だと指摘する。

GAFAMの一角である米アップル株が今年に入り再び最高値を更新しているように、景気の不透明感が強い局面では成長力の高いグロース株が買われる半面、景気が浮揚する局面では投資指標が割安なバリュー株の方が優位になる傾向がある。

新たな指数が投資家に広く認知され、投資資金を呼び込むにはパフォーマンスの裏付けも欠かせない。基準日から取引開始価格までの直近約1カ月ではプライム150の上昇率は6.2%と、東証株価指数(TOPIX)の7.5%を下回った。海外投資家の日本株に対する注目度が高い間に良好なパフォーマンスを示すことができるかどうかも重要だ。

また、資本効率に優れた企業で構成され、14年のスタート当時は多くの投資家の注目を集めたJPX日経インデックス400がTOPIXとの明確なパフォーマンスの違いを見せられず、市場で継続的に存在感を示せなかった記憶も市場関係者の間で残っている。

三菱モルガンの古川氏は、プライム150に海外投資家や個人の資金が流入する可能性はあるが、「かつてJPX日経400から降りたような一部年金などからすれば、投資には相当な意志決定が必要になりそう」との見方を示した。

By 長谷川敏郎

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