アフリカ以外の最大のコバルト供給国は今やインドネシアに
2021年12月22日水曜日、コンゴ民主共和国のルブンバシに近いカタンガ州のChemaf Sarlが運営するエトワール鉱山で、輸出用のコバルト粉末。Lucien Kahozi/Bloomberg

アフリカ以外の最大のコバルト供給国は今やインドネシアに

インドネシアは世界第2位のコバルト生産国となり、電気自動車(EV)のサプライチェーンで大きな役割を果たそうとする姿勢を強めている。

(ブルームバーグ) -- インドネシアは世界第2位のコバルト生産国となり、電気自動車(EV)のサプライチェーンで大きな役割を果たそうとする姿勢を強めている。

米国政府のデータによると、東南アジアでの電池材料の生産は昨年、ロシアやオーストラリアを抜いて2位に急浮上した。アナリストによれば、この10年間は生産量の拡大が続き、世界の供給量の3分の2以上をコンゴ民主共和国に依存する状況が緩和され、不足の可能性が回避されるだろうという。

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、豊富な鉱物資源を背景に、電池産業とEV産業の育成を率先して推進している。Benchmark Mineral Intelligenceによると、インドネシアはすでに世界のニッケルの約半分を生産しており、世界のコバルト生産量に占める割合は2021年の約1%から2030年には約20%に上昇すると予想されている

インドネシアのコバルトの役割は、この10年で拡大する|Benchmark Mineral Intelligence

Benchmark Mineral Intelligenceのアナリストであるハリー・フィッシャーとグレッグ・ミラーは、インドネシアの拡大は「世界のサプライチェーンを多少なりとも再構築している」とEメールで述べている。予算やコストの超過が当初懸念されたものの、多くのプロジェクトが「今日まで予定通りに進行し、順調に立ち上がりつつある」という。

コバルトの拡大は、ニッケルに加えてコバルトを含む化学カクテルを製造する精製所への中国企業による数十億ドルの投資のおかげである。世界最大のニッケル生産者であるTsingshan Holding Group Co.や、コバルト精製大手のZhejiang Huayou Cobalt、CATLとして知られるトップバッテリーメーカーなどが投資を行っている。

Benchmark Mineral Intelligenceによると、この国のコバルト生産量は今年も2倍以上になるという。

ゲームチェンジャー

インドネシアからの生産拡大は、航空宇宙材料から磁石、電池に至るまで多様な用途に使用されるコバルトの供給不足の懸念を和らげることにもつながっている。世界のコバルト価格は昨年5月から半値以上下落し、今年に入ってからは13%下落している。

コバルト価格の下落|コバルト価格の下落は、メーカーにコスト軽減をもたらしている

コバルト価格の軟化は、メーカーや自動車メーカーにコスト削減をもたらす一方で、コンゴ民主共和国の生産に関する倫理的な懸念や、近年の価格変動の影響を受けて、すでにバッテリーからコバルトを排除しようとしているメーカーもある。インドネシアからの供給が急増したことで、この2つの懸念が払拭される可能性がある。

Rystad EnergyのアナリストであるSusan Zouは、今年、世界のコバルト市場は余剰となり、供給が拡大するため、短期的には価格は「低迷」したままになるだろうとEメールで述べている。

「3~4カ月に1度、インドネシアで今後のプロジェクトに関する新しい発表がある」と彼女は言う。「これはゲームチェンジャーです」。

Annie Lee and Mark Burton. The Biggest Source of Cobalt Outside Africa is Now Indonesia.

© 2023 Bloomberg L.P.

翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ

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