楽天G、証券子会社上場でも懸念解消されない1.8兆円負債[ブルームバーグ]
記者会見する楽天グループの三木谷浩史会長兼CEO(2023年5月12日金曜日、東京)。楽天グループの第1四半期の営業損失は761億9000万円。Kosuke Okahara/Bloomberg

楽天G、証券子会社上場でも懸念解消されない1.8兆円負債[ブルームバーグ]

楽天グループの最新の資金調達手段に対する市場の反応が鈍い点を見る限り、債務リスクを軽減し、携帯電話事業を黒字化する十分な取り組みを行っていないとの懸念が長引く可能性を示している。

(ブルームバーグ):楽天グループの最新の資金調達手段に対する市場の反応が鈍い点を見る限り、債務リスクを軽減し、携帯電話事業を黒字化する十分な取り組みを行っていないとの懸念が長引く可能性を示している。

日本の電子商取引(eコマース)企業の楽天Gは4日、証券子会社の楽天証券ホールディングスの株式上場申請を東京証券取引所に行ったと発表した。一方、楽天Gの永久ドル債は6日の取引で9営業日続落。CMAのデータによると、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を使った債務不履行に対する保証コストは記録的な水準にとどまっている。

楽天G株は7日の取引で一時538.2円に上昇。4日以降の上昇率は4%を超えているが、楽天証HDの株式売却で多くの現金を手にする見込みがあるにもかかわらず、2月に付けた終値ベースの年初来高値を約25%下回る。東証株価指数(TOPIX)が30年以上ぶりの高値を更新した中での低迷が顕著だ。

米アマゾン・ドット・コムの競合である楽天Gは、携帯電話事業に巨額投資を行っている影響で純損益は前期(2022年12月期)まで4期連続の赤字。1997年にハーバード・ビジネス・スクールを卒業した三木谷浩史会長兼社長が設立した同社の市場価値は、今年5月の新株発行による公募増資などもあり半減した。

楽天Gは4日に発表した声明の中で証券部門の上場について、オンラインショッピングから金融、ワイヤレスサービスまでさまざまな事業を展開する各事業の意思決定のスピードアップを図る一環だと説明した。

同社広報担当者はブルームバーグの取材に対し、投資と財務健全性のバランスを取る方針に基づき、将来的に総有利子負債を増やすつもりはないと説明。むしろ、株式関連の資金調達の実施で有利子負債残高の削減を目指すと答えた。

楽天Gの負債が増加したのは、17年に日本の携帯キャリア市場に参入することを決定した後だ。最新の財務諸表によると、同社の非金融事業のための社債および金融機関からの借入金は、1-3月期に前年同期比27%増の1兆8300億円(127億ドル)に達した。

日本の人口のおよそ3分の1に当たる約4000万人のアクティブ顧客を抱える楽天Gは、資金繰りの苦しみを和らげるため、今年4月に銀行部門の楽天銀行の株式を東証に上場させている。

ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、マービン・ロー氏は楽天銀の上場と同様に、楽天証HDもグループの資金調達の圧力を和らげる助けになるかもしれないが、「恐らく一時しのぎに過ぎないだろう」と述べた。楽天Gの根本的な問題は、モバイル事業をいかに改善するかどうかだと言う。

日本格付研究所(JCR)は先月、携帯電話事業の回復には当初の予想より時間がかかるとし、楽天Gの長期発行体格付けを1段階下げ「A-」とした。株主の日本郵政は、保有する楽天G株の減損を計上すると発表した。これに先立ち米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングスは昨年末、携帯電話事業の改善の遅れを理由に格付けをジャンク級に引き下げていた。

アシンメトリック・アドバイザーズのマーケット・ストラテジスト、アミール・アンバーザデ氏は楽天銀の上場時と比べると楽天証HD上場による資金調達は比較的少額になるとし、楽天Gの「バランスシートに大きな変化をもたらすことはないだろう」とみている。

© 2023 Bloomberg L.P.

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