ギグエコノミーの賞味期限:通常の雇用体系では持続不能

先週、日本と米国で「ギグワーカー」の法的位置づけが再び問われた。このグレーゾーンを利用した低賃金労働に依存する新興企業は、ルールが変われば、持続可能ではなくなる恐れがある。


先週、日本と米国でギグエコノミーをめぐる興味深い動きがあった。

ウーバーイーツの配達員の自転車に衝突され、けがをしたとして、大阪市の会社役員の女性が、配達員と運営会社のウーバージャパンに約250万円の損害賠償を求めた訴訟では、同社が配達員と連帯し女性に140万円を解決金として支払うことで和解した。

この和解は、グレーゾーンで働くギグワーカーの地位について再度、議論を呼んでいる。ウーバーイーツの配達員は、運営会社の「ウーバージャパン」と雇用契約を結ばずに「個人事業主」として働いているが、原告は「事実上、配達業務を指揮監督している運営会社にも責任がある」として訴えを提起していた。和解内容は原告側の訴えを認めた形になっている。

一方、米国では、先週、バイデン政権がギグワーカーが独立契約者ではなく従業員に分類される可能性を高める新ルールを提案したことで、米ギグエコノミー大手企業の株価は急落した。労働省の提案が賃金コストを劇的に引き上げると投資家が懸念したため、ウーバーの株価は一時16.7%も下落し、ライバルのリフトと出前代行のドアダッシュの株価も11日のニューヨークでの取引中に過去最低値を記録した。

バイデン政権が提案した184ページに及ぶ規則は、最低賃金、残業、社会保障、失業保険の適用資格を決定する1938年の法律、公正労働基準法(the Fair Labor Standards Act)に基づいて、連邦機関が誰が従業員か独立契約者かを決定する方法を変更するものである。労働省は現在、提案に対するパブリックコメントを募集しており、最終規則が出されるのはさらに数カ月後となりそうだ。

この規則は、いわゆるギグエコノミーに大きな影響を与える可能性がある。ウーバーリフトは連邦政府への提出書類で、ドライバーを従業員として扱わなければならないため、ビジネスモデルの変更を余儀なくされると述べており、一部のギグエコノミー企業は、人件費が20~30%上昇すると見積もっている。両社はこれまで、全米各州の規制当局や議会による同様の取り組みと繰り返し戦ってきた。

規則は発令後、法廷闘争に移行する可能性が高いという。ギグエコノミー企業以外にも個人事業主という形で労働者と契約する企業は多くあり、業界団体やビジネスロビーは提訴の構えのようだ。

これらのギグエコノミーを謳い、一時は時代の寵児だった企業は、労働者をコントラクターに分類しているため、最低賃金や残業代、失業保険や社会保障への拠出など、従業員への手当を提供することが法的に義務づけられていない。ウェドブッシュ証券のアナリスト、Daniel IvesとJohn Katsingrisはリサーチノートに、これらの手当を追加すれば「(ギグエコノミー企業の)ビジネスモデルがひっくり返るだろう」と書いている。

「独立した契約者は経済において重要な役割を担っているが、雇用主が従業員を独立した契約者に誤って分類しているケースが多く見られる」と、マーティ・ウォルシュ労働長官は声明で述べている。これに対して、ウーバーとリフトは、ギグワーカーの請負業者としての分類は妥当であり、政府は再分類を要求しないだろうという趣旨の声明を出している。