ドナルド・トランプはいかにしてアメリカのアジアにおける利益を損なったか


ドナルド・トランプは2017年、長いヒットリストを持ってホワイトハウスに入った。彼が「我が国をレイプするもの」と呼んだ貿易協定である環太平洋パートナーシップ(TPP)は、そのトップに近いものだった。
大統領就任からわずか3日後、トランプはこの協定の廃止に動き、アメリカの利益を否定することだけに成功した。アメリカが協定を破棄した一方で、他の国々は予想に反して協定と、協定が象徴する自由貿易と多国間ルール作りの原則に固執した。5年前の今週、残りの11カ国の閣僚がチリに集まり、「環太平洋パートナーシップ包括的および先進的協定(CPTPP)」に署名した。
その成果はどうだったのだろうか? 民主党のジョー・バイデン大統領が、トランプの誤りを取り消すことで党内の保護主義者を怒らせないようにしているアメリカ抜きでは、経済的影響はかつて想定されていたよりも小さくなっている。グループ内の特定の組、特にベトナムやカナダなど自由貿易協定を結んでいない組は、貿易額が大きく上昇した。シンガポールの研究センター、アジア競争力研究所は、関税が1ポイント下がるごとに、域内の輸入額は22.9%、輸出額は11.6%も上昇する産業もあると指摘している。しかし、パンデミック、米中貿易戦争、ウクライナ戦争といった外的ショックは、状況を混乱させ、データ分析を複雑にしている。