中央銀行は耐えがたいトレードオフに直面した

中央銀行は耐えがたいトレードオフに直面した
2023年3月22日(水)、米ワシントンDCで開催された連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会議長が発言している。アル・ドラゴ/ブルームバーグ
“The

中央銀行の仕事は、銀行を安定させ、インフレを低く抑えることである。今日、中央銀行はその両面で大きな戦いに直面している。インフレの怪物はまだ手つかずで、金融システムは不安定に見える。

頑固な高インフレのため、FRBは3月22日、欧州中央銀行が金利を引き上げてから1週間も経たないうちに、金利を1/4ポイント引き上げた。FRBは、米国の中堅銀行3行が経営破綻し、資産総額5,000億スイスフラン(約71兆円)を超えるスイスの老舗銀行であるクレディ・スイスが、ライバルのUBSと出来レースで決着をつけた数日後に行動を起こした。JPモルガン・チェースのボス、ジェイミー・ダイモンが率いる銀行家たちは、次のドミノ倒しであるファースト・リパブリックを支えようとしているのである。

問題は、中央銀行の2つの目標がますます矛盾しているように見えることだ。米国の大手銀行を除くすべての銀行が、金利上昇の影響を受けている。貨幣の希薄化によって、銀行の証券ポートフォリオの価値が下がり、預金者が大手銀行やマネーマーケットファンド(MMF)に逃避する可能性が高くなったからだ。金利の引き下げは銀行を助けることになり、金融システムのバックアップも同様だ。しかし、どちらの選択肢も経済を刺激し、インフレを悪化させるだろう。

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再生可能エネルギー事業が正念場を迎える[英エコノミスト]

再生可能エネルギー事業が正念場を迎える[英エコノミスト]

数年前、自然エネルギーは太陽(と風)と共にある瞬間を迎えていた。低金利がクリーン電力のコストを引き下げたのだ。クリーン電力は導入コストが高いが、太陽と風によって無料で発電することができる。ソーラーパネルや風力タービンの価格は、技術が成熟し、メーカーが規模を拡大するにつれて下落した。こうした進展により、2010年から2020年の間に、太陽光発電、陸上風力発電、洋上風力発電の単位エネルギーあたりの資本支出と運転コストを考慮した平準化電力コスト(LCOE)は、それぞれ87%、64%、55%低下した(図表1参照)。クリーンエネルギーは汚れた代替エネルギーと競争力を持ち、大企業の電力需要家が開発業者から直接買い取ったのである。 ブルックフィールドやマッコーリーなどのインフラ投資家は、自然エネルギーに大きな賭けをした。BPなどの化石燃料企業も同様だ。欧州ではEDPやイベルドローラ、米国ではAESやネクステラ・エナジーといった公益事業者がプロジェクトに資金を投入した。デベロッパーが投下した資本に対する平均リターンは、2015年の3%から2019年には6%に上昇した。業界の見通しは非常

By エコノミスト(英国)
最強の会社は1on1ミーティングをやらない:エヌビディアの経営術

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AIブームをものにし、時価総額1兆ドル超えを達成したNVIDIA(エヌビディア)。創業者でCEOのジェンスン・フアンの経営手法は、1on1ミーティングをやらない、フラットな組織構造、毎日数百通の電子メールを送る、というユニークなものだ。 AIチップで知名度を上げたエヌビディアは、世界で6番目の時価総額を誇り、グローバルで2万6,000人以上の従業員を抱えている。それにもかかわらず、フアンの主なコミュニケーション手段は、毎日数百通の電子メールだと言われている。 米メディアThe New Yorkerによると、その電子メールの文章は非常に短いものという。彼の電子メールを「日本の俳句」に例える幹部もいれば、「身代金要求書」に例える幹部もいる。 「フアンは、固定された部門やヒエラルキーのない、アジャイルな企業構造を好む。社員は毎週、取り組んでいることの中で最も重要な5つのリストを提出する。フアンは夜遅くまでこれらの電子メールを精査しているため、メールの文面が簡潔であることが奨励されている」とThe NewyorkerのStephen Wittは書いた。「フアンはエヌビディアの巨大なキャン

By 吉田拓史