トヨタ新社長、能力主義的賃金の議論に加わる
トヨタ自動車は、日本におけるインフレの再来をきっかけに、長年低迷してきた賃金をより広く見直すため、従業員の報酬や昇進について、より柔軟で実力主義のアプローチを導入する。

(ブルームバーグ) -- トヨタ自動車は、日本におけるインフレの再来をきっかけに、長年低迷してきた賃金をより広く見直すため、従業員の報酬や昇進について、より柔軟で実力主義のアプローチを導入する。
トヨタは、単に自動車を製造するだけでなく、人や物を運ぶための幅広い製品やサービスを提供するモビリティ・カンパニーとなるため、労働力を効率的に使うだけでなく、より革新的に使う必要があると、次期最高経営責任者の佐藤恒治は先週水曜日に行われたブリーフィングで述べている。
トヨタは、能力主義的な給与をより完全に受け入れる必要性を強調する日本企業の仲間入りをした。この動きは、日本では一般的に給与をめぐる歴史的な変化が起きており、中央銀行がインフレの再来を考慮して賃金を引き上げるよう企業に促している中で行われた。トヨタのレクサスブランドでチーフを務めた佐藤は、来月、世界最大の自動車メーカーのCEOに就任する予定。
「賃金に関しては、人への投資と考える」と佐藤は水曜日に述べた。「インフレや労働環境の変化を考えると、人々が暮らしやすくする必要性も理解しています」
国内最大の雇用主であるトヨタは、毎年の賃金交渉の木鐸とみなされている。日本企業は物価上昇に対応して賃金を引き上げているが、その引き上げ幅は、日本銀行が超低金利の金融政策をすぐに打ち切るようなレベルには達していない。日本銀行は、物価の上昇を持続させるためには、より強い賃金の伸びが必要であると指摘している。

より広範な給与交渉について、佐藤氏は他社の決定についてコメントを避けたが、「賃金交渉では多くの前向きな議論がなされたと感じている」と付け加えた。
日本の大企業では、任天堂が2月に給与を10%引き上げると発表し、衣料品ブランドのユニクロを経営するファーストリテイリングは、日本の正社員の年俸を最大で40%引き上げると発表した。
トヨタ自動車は、第1回交渉で3年連続で組合側の要求を全面的に満たし、基本給を含む賃上げと、給与の6.7カ月分に相当する今年のボーナスの支給で合意したと述べた。
全体として、日本の企業部門の幅広い賃上げの予測は、約2.6%から2.8%で、団体交渉グループである連合が求める5%の引き上げや、中央銀行がインフレ目標の達成と政策転換のために求める3%の基準にはほど遠い。
同時に、トヨタは学歴や年功序列に基づく人事評価を廃止し、事業だけでなく産業や社会に対する個人の貢献度に重点を置く方針だ。
本田技研工業は先月、過去約30年間で最大の基本給の引き上げを含む5%の賃上げを実施すると発表した。ホンダは、今回の賃上げにより、月給が19,000円(141ドル)ほどアップすると述べた。また、インフレの影響を受けやすい若い従業員を優先して昇給させるとしている。
New Toyota CEO Joins Merit-Based Pay Argument as Inflation Rises
By Nicholas Takahashi
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翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ