中国に新たなEV用電池の巨人が誕生した - Anjani Trivedi
中国の電池充電施設。Source: Bloomberg

中国に新たなEV用電池の巨人が誕生した - Anjani Trivedi

グリーン化を急ぐ世界各国が電気自動車のサプライチェーンでシェアを確保しようとする中、エネルギー貯蔵は重要な戦場となりつつある。このプレッシャーに拍車をかけるように、中国の電池メーカーがまた一つ台頭してきた

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(ブルームバーグ・オピニオン)  -- グリーン化を急ぐ世界各国が電気自動車のサプライチェーンでシェアを確保しようとする中、エネルギー貯蔵は重要な戦場となりつつある。このプレッシャーに拍車をかけるように、中国の電池メーカーがまた一つ台頭してきた。

中創新航科技(CALB)は、香港で20億ドルでの上場を目指している。国有航空宇宙・防衛企業である中国航空工業集団の100%子会社である中航鋰電(洛陽)有限公司の下で2015年に設立された。CALBは今年初めに上場目論見書を提出した。製造規模の拡大競争が激化する中、資金調達に踏み切ることになる。

CALBは電気自動車(EV)や産業用エネルギーシステム用の電池セル、モジュール、パックを製造している。この2つは、中国が蓄電設備を強化し、電気自動車に対する消費者の関心が急増し、エネルギー危機が世界の工場に足止めをかける中、高い需要があるものだ。

シェア獲得|中国のEV用電池メーカーが相次いで三元系パワーパックを製造、シェアも上昇中

中国市場の約7.5%を占めるCALBは、ニッケルを多く含み、他の化学物質よりも高いエネルギー密度を誇る三元系電池で、世界トップの寧徳時代新能源科技(CATL)に次ぐ第2位のメーカーである。また、リン酸鉄リチウム(LFP)タイプも製造している。野村ホールディングスのアナリストによれば、江蘇省に拠点を置く同社は来年までに145ギガワット時の生産能力を持つ世界最大級の企業になると予想され、ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイが投資するBYDを追い越すものの、CATL、韓国のLGエナジー・ソリューション、中国の電池メーカーである恵州億緯鋰能(EVEエナジー)にはまだ及ばないとのことだ。

現在、どのグローバル企業も迅速に規模を拡大しようとしている。先週だけでも、パナソニック・ホールディングスからトヨタ自動車まで、数十億ドルの生産設備投資を発表している。世界では、米国のインフレ抑制法の導入や、中国が今年期限切れとなるはずだったEV補助金を延長するなど、EVと電池に焦点を当てた産業政策も積極的になっている。北京は過去10年間にすでに約150億ドルを交付している。

チャージング・アップ|世界のEV用電池メーカーが生産能力増強を急ぐ

CALBの増資は、全国にある生産拠点の迅速な拡張のための資金となる。2019年以降、同社の建設途中の支出は、生産能力と同様に毎年2倍以上になっている。従業員は製造・運用担当者がほぼ半数を占め、研究開発技術者が約45%を占める。設備は10ギガワット時(GWh)〜20 GWhで、それぞれ50億元(7億2400万ドル)〜100億元を投資する予定だ。CATLの規模にはすぐには届かないかもしれないが、拡大のスピードは速くなっている。今後2年間で、2021年時点でCATLの170GWh以上に対し、同社の有効生産能力は約55GWhに拡大すると見込んでいる。南は常州、東は合肥、そして厦門、成都、武漢、江門まで、全国に産業拠点を設けている。

サプライチェーンに支障が出ないように、原材料や完成品の在庫を確保した。また、LG化学などと並んで金属大手のテンキー・リチウム(天斉锂業)の株式を取得し、さらにパワーパックの主要部品で希少性が高まっているセパレータを製造する電池隔膜材料メーカー、雲南恩捷新材料と25億元の契約を締結して供給を確保した。これらの動きは、国内だけでなく、海外でも事業を拡大し続けるためのものである。

CALBの電池攻勢は、世界的に拡大する需要と供給のギャップを埋めることにつながる。一方、第三の強力なプレーヤーが急速に台頭してきたことは、中国のサプライチェーン支配にとって良い兆しである。CALBは、政策的に友好的で国の支援を受ける株主にも恵まれており、財政部が支援する製造業高度化ファンドや三峡資本(国有発電大手、中国長江三峡集団の投資部門)などの有力者が名を連ねている。北京の支援は、今のところ同社の海外進出の妨げにも、地政学的な懸念にもなっていない。すでにドイツと米国に現地法人を設立している。

しかし、順風満帆というわけにはいかない。急速な拡大には、大きなプレッシャーが伴う。昨年、CATLはCALBに対して知的財産権侵害訴訟を起こし、経済的損失と発生した費用として約1億9,000万元(約38億円)を支払うようライバル会社に要求し、その後賠償額を5億元以上に引き上げた。CALBは、この請求は「メリットに欠ける」とし、争っている。

また、同社が目論見書で指摘しているように、米国による中国軍需産業企業の非制裁リストに追加されたことで、投資家にとってのリスクもある。それでも、シャオミー(小米)の雷軍をはじめ、これまでの支援者を集めることに成功している。

CALBをはじめとする中国の電池メーカーの拡大は、技術力と成長力において、グローバルプレーヤーがいかに遅れているかを示している。また、中国の電池産業が他を大きくリードしている理由も浮き彫りになっている。

A New Chinese EV Battery Giant Has Emerged: Anjani Trivedi.

© 2022 Bloomberg L.P.

翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ