インテル、先頭集団から遅れ始める

インテルは明らかに苦しんでいる。プロセスの微細化は進まず、次世代CPUの製造時期の後ろ倒しが報じられ、決算の内容は燦々たるものだった。老兵は去ることになるのか、それとも劇的な復活があるのか。


インテルは、第4世代Xeon Scalable「Sapphire Rapids」プロセッサのリリースを、その理由を開示することなく何度も延期してきた。同社は7月下旬にセキュリティバグのためにSapphire Rapidsを変更せざるを得なかったことを認めたが、問題はインテルが言うよりも大きいようだ。ハードウェア専門メディアIgor's Labによると、Sapphire Rapidsには約500のバグがあり、同社はそれを直すために12回のリスピン(設計完了後に不具合が発覚し、再設計すること)を行っているという。

Sapphire Rapidsは、コア数を最大60に増やすだけでなく、数多くの新機能を搭載する予定である。最新のプロセッサは、数百億個のトランジスタを集積しているため、ある程度の数のバグがあることは避けられない。しかし、500個のバグによって生じた12回のリスピンが数千万ドルかかっていると見られている。

インテルが苦しんでいるように見えるのはSapphire Rapidsだけではない。 最近のTrendForceのレポートによれば、インテルがTSMCに対して、第14世代CPUのMeteor Lakeに必要な3nm GPUタイルの生産が遅延する可能性があるとされた。複数のシリコンダイを同一の基板に集積するチップレット構成を採用するMeteor Lakeは、GPUタイルと3つのタイル(2つはインテル製、もう1つはTSMC製)と組み合わせて、CPUの設計を完成させる予定だった。

Appleとインテルは、2022年後半にTSMCのN3生産ノードを採用する最初の企業となり、初期チップは2023年初頭に納品されると予想されていた。しかし、Intelの最初のN3製品は、Meteor Lake向けのGPUタイルになると予測されていたが、GPUタイルの量産開始を2023年前半に延期し、最近さらに2023年に延期したとTrendForceは報告している。

報道では、TSMCが納期に間に合わないのか、あるいはインテル自身のタイルが間に合わないのかは定かではない。

台湾エレクトロニクスメディア DigiTimesの以前の報道では、遅延はTSMCのものではなく、インテルが自社のタイルに難色を示したためとされていた。今回の噂に対し、TSMCは3nmの製造はすべて計画通りに進んでいるとし、顧客のビジネスについてはコメントを控えた。

インテルが置かれている厳しい状況

インテルが技術革新に腐心しているのは間違いない。老朽化した10nmプロセスから抜け出せていない。インテルがこのプロセスを「インテル7」と再ブランド化しても、ごまかせないほどの停滞だ。さらにデスクトップCPUは多くの電力を消費し、専用GPUはNVIDIAとAMDの牙城に取り付く競争力がない。次期プロセッサ群は絶望的に遅れており、間違いなく最近で最も有望とみられたメモリ技術「Optane」の事業を打ち切ったばかりでもある。

もちろん、ゲルシンガーには何の責任もない。彼が昨年初めにインテルへの復帰を決める前から、これらの構想はすべて進んでいた。しかし、投資家は、3カ月間で4億5400万ドルの純損失を出した同社の悲惨な第2四半期の結果、インテルに対する忍耐力を失っているのは確かだ。

この悲惨な業績と、さらに悲観的な見通しに対して、ゲルシンガーは次のような声明を発表した。「今期の業績は、当社と株主のために設定した基準を下回るものであった。我々はもっと良くしなければならないし、そうするつもりだ」。

一つだけ朗報がある。米国では半導体の国内製造支援に約7兆円投入を規定したCHIPS法が成立した。インテルは少なくとも軍資金については産業政策の追い風を受けることができる。しかし、お金がだけがインテルが抱えている問題なのだろうか?