米テック企業は今年7.7万人を解雇した

米テクノロジ企業によるレイオフは7万7,000人に及び、経済見通しの不安やテックセクターへの投資停滞などを理由に、社内の「合理化」が進んでいる。GoogleやMetaのようなリッチな会社も例外ではないようだ。


米金融メディアCNBCが入手した音声によると、今週行われた全社会議でGoogle CEOのスンダー・ピチャイは、旅行や娯楽予算の削減、生産性の管理、レイオフの可能性に関連する従業員からの厳しい質問に直面した。

ピチャイは、Googleの社内システムDoryで従業員から高い評価を得た質問で、「Googleには膨大な手元資金がある」にもかかわらず、なぜ予算を削減するのかと聞かれた。これに対してピチャイはマクロ経済状況に言及し、「私は、会社として、このような瞬間を乗り越えるために力を合わせることが重要だと思います」と答えたという。

7月、Googleの親会社Alphabetは2四半期連続で予想を下回る業績を報告し、第3四半期の収益成長率は前年同期の40%超から1桁に落ち込むと予想されている。Googleは、次世代ノートパソコン「Pixelbook」を開発停止し、社内インキュベーター「Area 120」への資金提供を打ち切った。

これは、Googleだけで起きていることではない。 MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグは、6月に行われた会社の全員参加の会議で、より率直にこう言った。「皆さんの中には、ここは自分には合わないと判断する人もいるかもしれないし、その自己選択も私は構わないと思う・・・現実的には、この会社にいてはいけない人たちがたくさんいるだろう」。

Metaは職場経費を10%削減する予定だとウォールストリートジャーナルは最近報じたが、その一部は人員削減によるもので、いくつかのチームを静かに解散させ、従業員に社内で新しい仕事を見つけるための30日間を与え始めている。このような別の仕事を得るための猶予期間を与える方法を新たなレイオフの仕方だと主張する報道もある。

人材市場の流動性の低下が、従業員側の交渉能力を落としているかもしれない。通常、Googleの社員は、自分の仕事に不満があれば、MetaやApoleなど、人材獲得にしのぎを削る近隣のハイテク大企業に簡単に転職できたが、最近では、ほとんどのテクノロジー企業が新規採用を減らしているのだ。

Crunchbase Newsの集計によると、2022年9月中旬の時点で、これまでに米国のハイテク分野で4万2,000人以上が大量解雇されたことが判明した。また、レイオフを追跡するクラウドソースサイト「Layoffs.fyi」によると、580社以上の新興企業が7万7,000人近くを解雇したとも言われる。

Netflixと同じくらいの規模のテック企業が今年に入ってから雇用を削減しており、コロナのパンデミックの影響を挙げる企業もあれば、急成長期の過剰雇用を指摘する企業もある。

テクノロジー企業の雇用が減速し、従業員が解雇されるにつれ、かつて多忙を極めたリクルーターは他の職務にシフトし、料金を引き下げている、とニューヨーク・タイムズのErin Griffithは書いている。

昨年まで、テック業界の人材採用は驚くべき活況を示していた。Griffithが取材したデザインソフトウェア新興企業Canvaの採用担当者によると、昨年LinkedInで、テクノロジー業界のリクルーターの求人情報(36万4,970件)がソフトウェアエンジニア(34万2,586件)よりも多かったという。

一つ勘案しないといけないのは、従業員数の多い製造業のような業界と比べると、ソフトウェア業界の人員数は小さく、7.7万人という数は雇用統計に大きなインパクトを与えるサイズではないことだ。レイオフの対象となった人々のうち多くは、次の職場を探すのに苦労しないだろう。

ウォール街は格好のエンジニア採用の機会と見ているようだ。証券取引所、銀行、マーケットメーカーが最近の市場の落ち込みを乗り越えて拡大を続けており、不況を乗り越えてきた安定性が、テック企業や暗号通貨企業で不安定さを味わったエンジニアに響いている、とインターコンチネンタル取引所の幹部は語っている。