
日本はロシアのエネルギーなしではやっていけない理由
日本がロシアのガスを他の供給国のもので代替できる可能性は、世界の天然ガス市場は供給不足に陥っているため、短期的にはほぼない。LNG以外の選択肢もあまりない。
(ブルームバーグ) --ロシアの大型エネルギープロジェクト「サハリン2」への日本の出資は、プーチン大統領がロシアの新会社に権利を譲渡する法令に署名した後、宙に浮いた状態となっている。資源の乏しい日本は天然ガスの需要をロシアに依存しているため、岸田文雄首相はモスクワと完全に決別することを渋っている。日本は代替供給源の確保に必死に取り組んでいるが、世界的なエネルギー不足の中で、島国日本がロシアの燃料を止めることは困難であることを意味している。
1. 日本はこれまでどのような制裁をロシアに課してきたのか。
2月末のウクライナ侵攻以来、日本はアメリカやヨーロッパ諸国と一緒になってロシアに制裁を加えている。半導体などの輸出規制や、一部のオリガルヒ(新興財閥)とその家族への制裁を行った。ロシアは国内での国債の発行を禁止されている。また、日本はウクライナ難民を受け入れている。ロシア軍によるウクライナでの戦争犯罪の疑いが報道された後、日本は4月にEUやG7諸国と同様に、ロシアの石炭の輸入を禁止すると発表した。岸田氏は、時期は明言しなかったが、代替エネルギー源の確保を迅速に行うと述べた。
2. 天然ガスについてはどうだろうか?
日本は自国の資源をほとんど持っていないため、そこで一線を画していた。サハリン2プロジェクトは、三菱商事と三井物産が合計22.5%の権益を持ち、そこで生産されるガスの大半は日本に供給されている。岸田氏はこのプロジェクトを「エネルギー安全保障にとって極めて重要なプロジェクト」と呼び、英国の石油メジャーであるBPとシェルが表明しているように、政府はこのプロジェクトから撤退する計画はないと述べた。また、日本の輸入量の9%を占めるロシアの液化天然ガスに対する直接的な行動も避けている。

3. プーチンの動きは、その所有権に何を意味するのか
プーチンは6月30日の政令でプロジェクトに関する権利の譲渡において、国益と経済安全保障への脅威を挙げた。利害関係者は1ヶ月以内に新会社に出資するかどうかを決めなければならず、出資しない人は十分な補償を受けられない可能性がある、と声明は述べている。この動きは、日本がサハリン2の所有権を放棄したり、重要なLNGの配送を中断させる可能性がある。また、サハリン1プロジェクトや北極圏LNG2プロジェクトなど、日本人が共同所有するロシアの他のエネルギー資産に対しても、モスクワは同様の命令を出す可能性がある。
4. ロシアのガスを他の供給国が代替できるのか?
世界の天然ガス市場は供給不足に陥っているため、短期的には無理だろう。ロシアが欧州向けパイプラインの供給を抑制しているため、LNGの需要が急増しており、米国の主要なLNG輸出施設は6月の火災の後、数ヶ月間停止したままとなる。欧州とアジアの燃料獲得競争が激化する中、LNGのスポット価格はこの時期としては過去最高値で取引されている。また、サハリン2は日本から最も近いLNG輸出施設であるため、新たな施設からの供給はより長い航海で船舶を拘束し、すでに緊張状態にあるサプライチェーンを実質的に混雑させることになる。

5. 日本にとってどうなのか?
日本は、異常気象、老朽化した発電所の閉鎖、予測不可能な再生可能エネルギープロジェクトの大きな成長、原子炉再稼働の遅れによる電力供給の逼迫に悩まされている。LNGの輸送に支障をきたすと、送電網がさらに拡張され、国内の一部で停電が発生する恐れがある。また、代替となる高価なLNGを調達することは、消費者や企業の電気料金を引き上げ、インフレを助長することになる。
6.代替燃料は?
LNG以外の選択肢はあまりない。石炭市場は逼迫しており、アジアでのスポット価格は過去最高値で取引されている。さらに、日本はG7のパートナー国とともに、ロシアの石炭輸送を禁止する方向に動いている。これは日本政府に休止中の原子炉の再稼働を加速するよう圧力をかけるかもしれないが、福島原発事故後の安全規則を変更するか、地元自治体からの支持を得なければ難しいだろう。

Shoko Oda, Stephen Stapczynski. Why Japan Will Struggle to Do Without Russian Energy.
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