
デタラメの経済 - ポール・クルーグマン
実際、経済データのばらつきが大きいので、経済評論家(私も含めて)は信じたいことを信じる異常な自由がある。聞きたいことを教えてくれる数字を選んで、一時凌ぎに上辺だけを取り繕うだけである。
[著者:ポール・クルーグマン]チャールズ・ダーウィンにまつわる古い話がある。それは真実かどうかはわからないが、現在の経済情勢にふさわしいと思われる。この話によると、二人の少年がムカデの胴体、蝶の羽、甲虫の頭など、さまざまな昆虫の断片を接着剤で貼り合わせ、ギャグのつもりでその作品を偉大な自然主義者に見せ、同定してもらったという。「捕まえた時、鼻歌を歌っていた?」という質問をした。と聞かれ、「はい」と答えると、自然主義者はそこれは羽虫(Humbug)だ」と言ったようだ(編注:Humbugには「でたらめな」「虚偽の言動」の意もあり、筆者はそれにひっかけている)
今、私たちが直面している経済状況は、まさにでたらめな(Humbug)状況だ。データを捏造しているとは言えないが、さまざまな情報が一致しないのだ。あるデータは景気後退を示唆し、あるデータは景気回復を示唆する。あるデータは景気後退を示唆し、またあるデータは景気回復を示唆する。労働市場が非常にタイトであることを示唆するデータもあれば、そうでないデータもある。