豪鉱山王、グリーン水素で再エネの主役に名乗り

豪大手鉱山会社がグリーン水素の生産者へとかじを切り、再エネの主役に名乗り出ようとしている。一代で鉄鉱石の王国を作り上げたアンドリュー・フォレストのドラスティックな戦略に注目が集まっている。


「ブルー水素と炭素回収・貯留(CCS)は株主を欺き、地球温暖化とロシアの侵略の脅威を拡大させる効果のない『グリーンウォッシュ』だ」

豪鉱山会社フォーテスキュー・メタルズ・グループ(FMG)会長のアンドリュー・フォレストは先週ロンドンで開催されたフィナンシャル・タイムズの水素サミットでそう主張した。

最近、ロシアのプーチン大統領を「殺人者」と呼んだことでクレムリンから制裁を受けたフォレストは、 CCSについて、地下に隔離された二酸化炭素は破滅的な漏出をもたらす、と主張した。「穴の中に留まり、漏れるのは年1%未満に過ぎないと言う科学者にはまだ会っていない。実際にはそれよりずっと早く漏れてしまう」

フォレストの非難は、テスラのイーロン・マスクにも及んだ。「イーロン・マスクは、テスラが世界中のほぼすべての電気系統に接続されるたびに、石炭や石油、ガスを燃やしているに過ぎないことを知っている。つまり、環境にとって何の役にも立っていない」

FMGは鉄鉱石を採掘し、主に中国の製鉄会社に販売することで昨年103億ドルの利益を上げた。その過程で、同社は7億リットルのディーゼルを消費し、220万トンの温室効果ガスを放出した。

FMGはこの鉱山企業を再生可能エネルギー、特にグリーン水素の世界的リーダーへと変貌させようとしている。

FFIは現在豪クイーンズランド州に建設中のグリーン・エネルギー・マニュファクチャリング・センター(GEM)において、2022年12月に巨大電解槽を稼働させる計画を発表している。第1段階は、1億1400万豪ドル(11億ドル)の電気分解機施設。

電解槽の初期容量は年間2ギガワットで、これは現在の世界の生産量の2倍以上となり、年間20万トン以上のグリーン水素を生産するのに十分な容量だ。同社は「世界をリードする技術と製造方法を採用し、クイーンズランド州をグリーンエネルギー大国へと変貌させる」と豪語している。

フォレストは、自身のグリーンエネルギー部門であるフォーテスキュー・フューチャー・インダストリーズ(FFI)が、2030年までに年間1,500万トンのグリーン水素を生産することができると考えている。鉄鋼の原料である鉄鉱石を1億8千万トンも採掘して出荷するだけでなく、自社で排出する二酸化炭素をゼロにしようとしている。

エジプトのアブデル・ファタフ・エル・シーシ大統領は13日、フォレストと会談し、両者はエジプトでのグリーン水素製造の開発を視野に入れた調査を行う覚書に署名した。今回の会議では、設置容量9.2GWのグリーン水素製造プロジェクトの開発可能性について議論している。