アマゾン参入がドアダッシュとウーバーをどれほど追い詰めるか

アマゾンが米国のフードデリバリー市場に参入した。利幅の薄いビジネスをアマゾン・プライムの特典に加えることで、競争相手よりも財務的な弾力性を備えることになるだろう。Uber EatsとDoorDashにとってはとんだ災難だ。

米国のアマゾン・プライム加入者は、サブスクリプションの一部として、参加レストランからの12ドル以上の注文で追加料金なしでフードデリバリーを提供する月額サブスクの「GrubhubPlus」を無料で1年間利用できるようになる。GrubhubPlusは通常月額9.99ドル。

発表された取引の一環として、アマゾンはグラブハブ(Grubhub)の2%の株式を取得し、これは時間の経過とともに15%に上昇する可能性がある。

アマゾンによると、Grubhub Plusに関連する無料配達は、米国内の4,000以上の都市にある数十万のレストランから利用できる。1年を過ぎると、Grubhubは自動的に継続利用のための月額9.99ドルの課金を開始する。

アマゾンはフードデリバリー市場で競争するための独自の試みである「Amazon Restaurants」を2015年から2019年にかけて稼働していたが、Uber EatsやDoorDashといった企業との厳しい競争に直面し、撤退していた。

それ以来、Eコマースの巨人は主に食料品の配達に注力しているが、他の企業との提携を通じてフードデリバリー市場に足を踏み入れている。2019年にはヨーロッパに特化したDeliverooへの投資を発表し、昨年にはイギリスのプライム会員向けの追加特典として、Deliveroo Plusの定期便サービスへのアクセスを提供し始めた。これによって、イギリスのフードデリバリー市場において、Deliverooのシェアは拡大し、UberとDoorDashを圧迫した。

今回のアマゾンの動きは、米国でもUber EatsやDoorDashにとって大きなプレッシャーとなることを暗示している。DoorDashはアマゾンの発表があった6日の取引で11%も急落し、株価は11月につけた高値から70%以上下落した。フードデリバリー部門を持つUberも4%以上下落した。

パンデミックの魔法が解けたことによってフードデリバリーを巡る環境は悪化している。例えば、欧州のフードデリバリー企業であるJust Eat Takeaway.comとDelivery Heroは、2022年上半期のストックス欧州600指数の10社の大負け組に入り、共に60%以上下落し、Deliverooを加えると、時価総額の損失は300億ドルにもなる。これらの銘柄は、パンデミックによる売上高の急増を背景にした利益を、とっくに手放している。

投資家にとって重要な懸念は、これらの不採算企業が依存している成長が弱まり始めていることである。インフレとエネルギー料金の高騰が可処分所得を減少させ、顧客の財布の紐を固くするため、多くのアナリストはこの状況が下半期も続くと予想している。

成長鈍化の一因は、自ら招いたものである可能性が高い。収益性を改善するために、各社は顧客割引やマーケティングなどの費用を削減する一方、配送料やサービス料を引き上げて消費者にコスト増を転嫁すると見られているからだ。