中国はEVと再エネの供給網を独占しようとしている

中国は電気自動車(EV)と再生可能エネルギーのサプライチェーンで有利な地位を築いているが、今度は首位固めをしようとしているように見える。政府の首尾一貫した支援に基づいて民間企業は資金調達を行い、積極的な投資を行っている。

先週、電池に使用される主要材料の中国サプライヤーであるティエンチー・リチウム(天斉鋰業股分有限公司)が、香港証券取引所の承認を得て、香港での上場を計画していると、この問題に詳しい関係者を引用してブルームバーグが報じた。

ブルームバーグによると、深圳に上場している同社は、香港証券取引所の上場委員会でヒアリングを受けた後、許可が下りたという。この株式の売り出しで10億ドルから12億ドルを調達することを検討していると、関係者の一人は語った。

寧徳時代新能源科技(CATL)は、先週450億元(70億ドル)の私募を開始し、水曜日に一株あたり410元で値付けを行った。フィナンシャル・タイムズ(FT)の計算とRefinitivのデータによると、今回のジャンボ株式売却を含め、CATLは2018年に深センで上場して以来、約130億ドルを調達しているという。

中国の大手原料サプライヤーである華友コバルト(香港上場)は、私募増資で最大177億元(約3,560億円)を調達する予定だ。この新たな資金の大半は、インドネシアでニッケル採掘権を持つTsingshan Holding Groupとの合弁会社、Huashan Nickel-Cobalt Indonesiaが水酸化ニッケル・コバルト生産拠点を建設するために使われる予定だという。華友はまた、今回の第三者割当増資のうち15億人民元を使って、中国南部の広西省で電池用リチウム塩年間生産量5万トンのリチウム鉱石処理工場を建設する予定だとも述べている。

このように中国のEV、クリーンテック企業による資金調達が盛んである。これは中国政府がテクノロジー企業の取り締まりに性を出す一方で、クリーンテック企業の育成に極めて熱心であることをなぞっている。この方針転換は、二年前にアリババのジャック・マーが公の場で規制当局を批判し、アントグループのIPOが停止されたときから明確なトレンドとなった。

中国の工場は現在、世界のEV用電池生産の4分の3近くを占めている。この大国は、電池に使用される酸化物、金属、磁石であるレアアースの加工で90%の市場シェアを占めており、これは太陽光発電産業における牙城に匹敵するレベルである。

世界の電池用リチウムの90%以上は中国の精製所から生産されており、中国の精製所は他の主要な電池材料であるコバルトとニッケルの大部分も加工しているとのことだ。

FTが引用したバーンスタインの予測によると、EVの需要拡大に伴い、世界のバッテリー容量は2025年まで毎年40%ずつ増加し、2021年の823GHhから3,252GWhになると予想されています。米国と欧州が自動車メーカーの近くに工場を建設するために多額の補助金を出しているため、中国のEV用電池容量の市場シェアはわずかに減少しますが、それでも2025年までに約3分の2になる。

なかにはすでに中国の優位性に賭ける投資家も出てきている。韓国初の電子自動車産業への投資に特化した投資信託が、テスラ社へのエクスポージャーを過去最低水準に引き下げる一方、中国のライバルに資金をシフトした。2017年の設立以来テスラホルダーである韓国投資管理株式会社のファンドは、過去には9%にも及んだ米国自動車メーカーへのエクスポージャーを今年、純資産価値の3%未満に着実に切り詰めたのだ。

電気系統が追いつかないほどの発電設備投資

中国は2020年に風力発電、2021年に太陽光発電の設備容量の記録を更新し、今年はその2倍になる予定だ。ただ、中国は、送電網の処理能力を上回る速さで風力発電機やソーラーパネルを増設しているため、多くのクリーンエネルギーを浪費しているともいわれる。

経済参考報は、政府のデータを引用して、内モンゴルの風力タービンで発電された電力の12%近くが、今年、電気系統がそれを受け入れることができず、青海省の太陽光発電の10%と一緒に無駄にされたと報じた。晴天で風が強いが人口の少ない甘粛省では、風力発電と太陽光発電の利用率が、2021年の97%近くから今年は90%を下回る可能性があるという。

必要なのは、風力発電と太陽光発電を利用できる場所まで運ぶ長距離送電線の建設と、電力を吸収して必要なときに再分配できる蓄電システムの開発である。中国の主要電力会社2社が最近、経済活性化のために設備投資を増やすと約束したことで、この2つの技術への投資は増加すると思われる。