
セコイアとタイガー・グローバルがソフトバンクを手玉に取る - Shuli Ren
クラーナの高値づかみによってソフトバンクグループの孫正義の評判にまた新たな傷がつき、かつての破壊王は因果応報に陥った。最近の孫は、どういうわけかいつも最悪のカードを持っている。
(ブルームバーグ・オピニオン) -- ウィーワークとグリーンシルの大失敗が十分でなかったなら、クラーナは、ソフトバンクグループが混雑するベンチャーキャピタル業界で最も不運なクジラだということを改めて示す良い材料になるはずである。創業者の孫正義は、どういうわけかいつも最悪のカードを持っている。
スウェーデンを拠点とするこのフィンテック企業は、BNPL(後払い)方式で知られているが、現在約6億5,000万ドルの資金調達に向け交渉中である。この取引が完了すれば、クラーナの企業価値は65億ドルにリセットされ、ちょうど1年前にソフトバンクが主導した6億3,900万ドルの資金調達ラウンドでつけられた456億ドルと比べると、ほんのわずかな金額となる。

壮大なスケールのダウンラウンドである。2年前、1,000億ドル規模のビジョン・ファンドのマネージャーは、ウィーワークの評価額を2019年の470億ドルから29億ドルに切り下げた。クラーナに関わる絶対的な金額ははるかに小さいが、それでも孫の評判に与える打撃は同じくらい大きい。ビジョン・ファンド2は間もなくクラーナの株式を評価減し、そのリターンの多くを帳消しにしなければならない。3月31日時点で、この560億ドルのファンドはわずか8億ドルの投資利益を計上したに過ぎない。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの広報担当者は、ブルームバーグ・オピニオンが送った問い合わせに対するコメントを拒否した。
一方、セコイアのマイケル・モーリッツは、クラーナの会長も務めており、うまくカードを使ったといえる。セコイアは2010年には早くもクラーナを支援しており、その後、2014年には評価額14億ドルとされる資金調達ラウンドを主導し、2019年には35億ドルで再び投資を行っている。3月時点では、クラーナの筆頭株主である。

ソフトバンクとは異なり、今回の買収では、セコイアは早期に投資していたため、含み損の計上を強いられることはない。しかし、より重要なことは、世界的な景気後退が迫り、消費者のバランスシートの悪化に対する緩衝材としてクラーナが資本を必要としている中、モーリッツは、孫のユニコーンの評価が再び不時着することを気にもとめないだろう、ということだ。
また、ソフトバンクのクラーナにおける失態は、最近のベンチャーキャピタル(VC)界の激変、特にニューヨークを拠点とするヘッジファンドの登場に対するパニック反応だったのか、考えてみる価値がある。ソフトバンクは、最もホットな新興企業へのアクセスを失い始めた。なぜなら、新規参入者はより大きく、より速い小切手を書くことができるからである。
昨年、チェイス・コールマンが率いるタイガー・グローバル・マネジメントは、ソフトバンクを抜いて世界で最も忙しいベンチャーキャピタルとなった。タイガーは資金を引き付ける力があり、たった1年の間に2つのファンドで200億ドル近くを調達した。タイガーは、銀行との関係を活用し、個人資産家のような幅広い投資家に声をかけていた。
確かに、タイガーはシリコンバレーのVCファンドにとっても脅威である。しかし、セコイアは、ワンストップショップを好む投資家を引きつける方法として、タイガーと同じように投資アドバイザーになるように仕組みを一新し、解決策を見いだした。セコイアは、米国に特化した2つの新しいファンドの資金調達を行っており、最大で22億5,000万ドルにのぼるとされている。セコイアの中国法人は、90億ドルの資金を調達しようとしている。これは、地域のハイテク新興企業に投資するために単一のVC企業が調達した資金としては、過去最大の規模である。
一方、ソフトバンクはタイガーに対して何の防御策も持っていない。ソフトバンクは、2回目のビジョン・ファンドの資金を自己資金で調達し、単独で行動しなければならなかった。さらに悪いことに、資本力がなくなった今、孫社長は「スプレー・アンド・プレー(数打てば当たる)」方式に切り替えた。3月の時点で、2号ファンドは252件の投資を行ったが、1号ファンドは94件にとどまった。
VCの第二の課題は、優秀なファンドマネジャーをいかにして確保するかである。その結果、報酬は高騰しており、セコイアのような新しい仕組みは、パートナー間の給与の争いを最小限に抑えることができる。
しかし、ソフトバンクにはその解決策もない。ソフトバンクは頭脳流出に悩まされている。最も注目を集めたのは、経営難に陥っていたウィーワークを立て直した元最高執行責任者のマルセロ・クラウレが1月に退社したことだ。クラウレは最大10億ドルの報酬を要求していたが、代わりに3,400万ドルの退職金を手にした。4月には、同社のラテンアメリカ・ファンドのマネージングパートナー3人のうち2人が退職し、自らもベンチャー企業を立ち上げている。このように、ソフトバンクの最新の投資先がどれほど優れているか、あるいはこれからどうなるかは疑問である。
因果応報というか、物事が一周したとでもいうべきか。5年前、ソフトバンクは1,000億ドルのビジョン・ファンドによってベンチャーキャピタル界を混乱させた。今、ソフトバンクの価値提案は、あらゆるところから攻撃を受けている。破壊者は破壊され、潰されようとしているのだ。
Shuli Ren. Sequoia and Tiger Global Take SoftBank to the Cleaners.
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