高齢化する日本の億万長者は自分が必要不可欠だと考えている、それが問題だ - リーディー・ガロウド
この国で最も勤勉な企業創業者たちは、立ち去るべき時を知らない。日本の高齢化した億万長者は、自分たちが必要不可欠な存在だと考えている。それが問題だ。

日本電産創業者の永守重信氏が、77歳という“はつらつとした年齢”で再びモーターメーカーの最高経営責任者(CEO)の座に返り咲いた。テープレコーダーの部品メーカーから、ハードディスク用モーターのトップメーカーに成長し、現在は電気自動車の部品供給も拡大している。
昨年、日産自動車から関潤を引き抜き、後継者に据えたが、昨年の高値から40%も株価が下落したため、急遽、関を降格させた。4月21日、永守は「このような時だからこそ、短期的には私が指揮を執り、業績を向上させる」と述べた。彼がいなかったら、会社はどうなってしまうのだろう。
それは褒め言葉ではない。市場の反応は慎重で、株価は金曜日の終値で下落した。永守が後継者候補を追い出すのは2度目で、以前にも日産の元幹部、吉本浩之を採用し、昇進させ、その後退任させたことがある。「今回の経営陣の交代は、日本電産の主要人物と後継者のリスクを浮き彫りにした」とムーディーズ・コーポレーションのアナリストは述べている。

77歳の日本電産創業者、株価暴落の後にCEOに返り咲く
このようなリスクに直面している日本企業は、日本電産だけではありません。実際、この考え方は日本の勤勉な億万長者にも感染しているようだ。
ソフトバンクグループの孫正義(64)は、後継者候補を食い潰し、最近では給与をめぐってマルセロ・クラウレと対立し、袂を分かった。ユニクロの創業者である柳井正は、65歳でファーストリテイリングを退職すると言っていたが、現在73歳、衰える気配はない。
株主は「どうするのか」と聞く権利がある。マンチェスター・ユナイテッドは、この9年間で5人目のフルタイム監督を任命した。
確かに、永守、孫、柳井(日本の5大富豪のうちの3人)に会社から手を引けというのは、タイミングが悪いと言わざるを得ない。ファーストリテイリングとソフトバンクの株価は、ピークであった昨年の半分程度で取引されている。孫は2月、「楽しすぎて退任できない」と述べた。投資家は彼の歓喜の感覚を共有できないかもしれない。
彼は2016年に、後継者に指名されていた元グーグル幹部のニケシュ・アローラに手綱を渡す機会があった。しかし、彼はソフトバンクを通信会社からベンチャーキャピタルファンドに変貌させるために、ここに留まることを決めた。アローラは結局、パロアルトネットワークスを引き継ぎ、同社の株価はその後180%上昇し、S&P500種株価指数を上回った。
日本では、キーパーソンリスクの完璧な例を探す必要はないだろう。日本で最も有名な元CEOのカルロス・ゴーンは、日産を改革した後、法的な問題が起こる前であっても、長期の任期を終えた。ゴーンの突然の退任以来、日産とルノーは共に苦境に立たされている。一方、ゴーンは日本では指名手配中であり、現在フランスでは、ルノーから資金を私的に流出させた疑いで逮捕状が出されている。
しかし、このように創業者自身が身を引くことに成功した例もある。キーエンスでは、日本で2番目の資産家である滝崎武光が、2000年に55歳で会長に就任した。その後、株価は1,000%以上上昇し、日本第2位の大企業になった。社長交代も順当で、現在3代目の社長がいるが、いずれも40代で、新しい生命と活力を吹き込んでいる。
77歳の永守も、その点では不足はない。3年後には社長の座を関に譲ると言っている。しかし、永守も他の引退した億万長者も、その手本を見せなければならない。キーマン・リスクは日本の風土病だ。2025年には、70歳以上の経営者がいる中小企業は約245万社に上り、その半数以上が後継者未定と言われている。今こそ、トップである富裕層からリーダーシップを発揮する時だ。今こそ、トップである金持ちからリーダーシップを発揮する時だ。立ち去るべき時を知る、ということだ。
Gearoid Reidy. Japan’s Aging Billionaires Think They Are Indispensable. That’s a Problem.: Gearoid Reidy. © 2022 Bloomberg L.P.