AIの特許取得は認めざるを得ない?

豪州のニューサウスウェールズ大学のそれぞれ法律とAIの教授であるアレクサンドラ・ジョージとトビー・ウォルシュは、機械を発明者として認めないことは、経済や社会に長期的な影響を与える可能性があると主張した。

特許法は、発明者が人間であることを前提に作られている。AIシステムを発明者とする特許出願が100カ国以上で行われており、世界中の裁判所がこの問題と格闘している。米国、英国、欧州をはじめ、複数の団体がAIと知的財産(IP)法に関する公開協議を行っている。

「裁判所や政府が、AIで作られた発明は特許を取得できないと判断した場合、その影響は甚大になる可能性がある」と、彼らはNature誌に掲載されたコメントに書いている。「資金提供者や企業は、投資に対するリターンが制限される可能性がある場合、AI発明者を用いて有用な研究を追求するインセンティブが低下することになる。社会は、価値ある発明や命を救う発明の開発を見過ごすことになりかねない」

今日の法律では、人間を特許侵害から保護する知的財産権を持つ発明者として認めているものの、「人間以外」への規定は存在しない。人工知能(AI)は、ワクチン開発、薬物設計、材料発見、宇宙技術、船舶設計の支援にも利用されている。数年以内に、数多くの発明がAIに関わるようになるかもしれない。これは、特許制度が直面している最大の脅威の一つを生み出している。

人間中心の法律を覆そうとする試みは失敗している。AIが自社製品を発明したと主張する開発者のスティーブン・セイラーは、米国や英国を含む複数の国の商標局を訴えたが、無駄だった。米国著作権局は、2022年2月14日に「Creativity Machine」というアルゴリズムによって創作された絵の著作権を認めるように求めた申し立てを却下した。「AIは作家、著者、著作権保護の基準であり、その要素は『人間の著作権』である」と同局は説明している。

ジョージとウォルシュは、セイラーの立場に味方している。「オーダーメイドの法律や国際条約を作ることは簡単ではないが、作らないことはもっと悪いことだろう。AIは科学のあり方、発明のあり方を変えつつある。公共の利益に資するよう、目的に合った知財法が必要だ」と書いている。