ゲームビジネスはAmazonの鬼門

要点

Amazonは10年近くゲームビジネスに携わっているが、ほぼすべてが失敗に終わった。「エクセル思考」のEC企業にとって、ゲームのようなクリエイティブなジャンルは難しすぎた?


Amazonは自社のビデオゲームの制作に再挑戦している。9月下旬、1年以上の延期を経て、大西洋に浮かぶ架空の島を舞台に、プレイヤーが派閥に所属し、モンスターと戦い、互いに協力して植民地化を目指すMMO(マッシブ・マルチプレイヤー・オンライン / 大規模多人数参加型オンライン)『New World』をリリースした。

この40ドルのゲームは、過去数ヵ月間にプレイヤーが初期バージョンをテストした結果、おおむね好意的な評価を得ていた。

同作はリリース直後に、90万人を超えるピーク同時接続者数を記録。MMO期待の新星としてのデビューを飾った。ゲームに参加するために1万人ものプレイヤーが待ち行列を作っているという報告もあった。

『New World』は、Amazonにとって大きな一歩となる可能性があった。従来のゲームパブリッシャー以外の企業で、ゲーム業界への参入に成功した企業はほとんどない。例えば、Googleは今年初めにゲームスタジオを閉鎖した。

しかし、同作はリリースから約1か月となり、プレイヤー数に陰りが見えているようだ。SteamDBによると、『New World』における10月2日(日本時間)のピーク接続者数は約36万人と半分以上のプレイヤーが同作を離れてしまった。

Steamユーザーレビューによると、バグの多さに言及するプレイヤーが数多く見られる。なかにはゲームプレイに重大な影響をもたらしうるバグがあり、最近、チャットにHTMLコードを挿入できてしまうバグが発見された。悪意のあるコードを送信して、ほかプレイヤーのクライアントを終了させることもできたという。

また、ゲームデザインの不備も指摘されている。PlayerAuctionsによると、ゲーム内経済が「デフレ状態」にあるという。まるで日本の写し絵のような経済危機を受けて、一部プレイヤーはゲーム内通貨の利用を控え、物々交換に乗り出しているそうだ。

ゲーム内には懲罰的な「税」負担が存在し、アイテムの作成や家の所有、修理にかかる費用がプレイヤーのコイン蓄積能力を上回っているという。ゲーム内でコインを入手する方法では、コストが得られるコインを超過する場合があり、コインの希少性が増えているという。

さらに、企業が領土を所有すると課税され、マージナルが潜在的な利益をはるかに上回ることも報告されている。

(日本の財務省と同じ過ちをAmazonは犯したようだ。スプレッドシートドリブンな考え方をしていると「経済」の概念が理解できない?)。

ゲーム部門における苦闘

Amazonのゲーム部門は長い苦難の道を歩んできた。推定で数億ドルを費やした後、Amazonが2016年に『New World』と並んで制作を発表した他の2つの大作ゲームは、いずれも現在存在していない。同社のゲーム部門の幹部の何人かは、目立ったタイトルを出すことなく、同社を去った。

ゲーム業界におけるAmazonのこれまでの最大の成果は、2014年に約10億ドルで買収したライブストリーミング動画サイト「Twitch」の買収だった。また、Amazonは新しいゲームのサブスクリプションサービス「Luna」を進めており、最近ではモントリオールに新しい開発スタジオを設立することを発表している。

独自のゲーム開発部門を作成するというアイデアは、Amazonの責任者から直接生まれたもの。 Amazon Primeサブスクリプションの一部として、ゲームはサービスのサブスクリプションを販売し、ゲーマーをインターネットの巨人の映画、テレビシリーズ、その他の製品に引き付けることが期待されていた。

2012年にゲームスタジオを開設したAmazonにとって、自社のゲームで成功することは難しいことだった。2012年にゲームスタジオAmazon Game Studiosを開設したAmazonは「マインクラフト」のようなヒット作を作りたいと思っていた。その代わりに、いくつかのモバイルタイトルを制作したものの、過去数年間で少なくとも4つの大作ゲームを中止または終了させている。

2018年、Amazonは「Breakaway」というスポーツゲームの開発を終了。2020年にはマルチプレイヤーゲーム「Crucible」が酷評されたため、すでに発売されたゲームを中止するという珍しい措置をとった。今年の4月には、制作で提携していた中国のテンセントとの間で契約上の問題が発生し、予定していた「ロード・オブ・ザ・リング」のゲームを中止した。

Amazonが苦戦している理由としてよく挙げられるのは、大手テクノロジー企業の典型的な考え方である、何かに資金を投入して規模を拡大し、結果を期待するという分析的なアプローチが、ゲームのような気まぐれで芸術的な業界では通用しないということだった。

Amazonを支配しているのは、何よりもまず、このスプレッドシートの論理だが、ゲームを作るという、ごった煮のようなクリエイティブなプロセスが、Amazonの企業文化には合わなかった、という説明を特に否定する要素はない。

財務情報の開示でゲームの売上を明らかにしていないAmazon以外では、特にパンデミックの際にゲーム業界は繁栄した。ゲーム分析会社のNewzooは、今年、人々がゲームに費やす金額は1,758億ドルになると予測している。

via Newzoo.

独自のゲーム開発基盤を採用

AmazonはUnityとUnreal Engineを廃止し、独自のテクノロジーを採用することにした。2014年以来、スタジオはLumberyardと呼ばれるエンジンを開発している。

LumberyardはCrytekのゲームエンジンCryEngineをベースにしたクロスプラットフォームゲームエンジンだった。Lumberyardエンジンは、Amazon Web Servicesとの統合により、開発者がAmazonのサーバー上でゲームを構築またはホストすることを可能にするほか、Twitchによるライブストリーミングをサポートしている。

2021年7月、 AmazonはLumberyardの新バージョンをOpen 3D Engine(O3DE)と改称し、新しいオープンソースのゲームエンジンを作成することを発表した。

しかし、今のところ、AmazonがUnityとUnreal Engineを脅かす様子は見られない。

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