アマゾンがPB事業を縮小する本当の理由

アマゾンはプライベートブランド(PB)事業を縮小している。これを独占禁止当局への譲歩とする報道もあるが、実際にはビジネスとして旨みが薄かった以上の理由はないだろう。


先月中旬、アマゾンがプライベートブランド(PB)の商品数を大幅に減らし始めており、規制の圧力を緩和するためにPB事業から完全に撤退する可能性も検討していると、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた

アマゾンは、第三者の販売者データを使って、PBの模倣品を作っていると言われ、他のメーカーよりも深い消費者インサイトに基づいた商品開発が可能であり、これが独占的な慣行であると非難されていた。

しかし、実態は大きく異なったようだ。アマゾンは、PBが売上の1%を占め、2021年通年で47億ドルに相当するにすぎないという。2009年にAmazonBasicsの電池でスタートして以来、AmazonのPBは、WSJによると「45の異なるハウスブランドで24万3,000の製品」にまで膨れ上がっているにもかかわらず、だ。

このため、様々な報道で流布されているプライベートブランド事業からの撤退が規制当局への配慮とする言い分は、方便と見ていいだろう。

PBビジネスは、基本的に大手小売業者にとっては通過儀礼のようなものだ。テクノロジー・アナリストのベネディクト・エヴァンズが指摘するように、ターゲット(33%)、クローガー(25%)、コストコ(20%)、オフィス・デポ(20%)、ウォルマート(15%)など、他の業界プレーヤーにとってPB事業の売上シェアは相当なものである。アマゾンも同じことがしたくなるのは理解できる。

しかしながら、アマゾンのマーケットプレイスには約200万のセラーがおり、会社全体の売上の58%を占めていることを考えると、PBは時間をかける価値がないのかもしれない。サードパーティーの出品者の販売については、アマゾンは実質的に在庫リスクを負わなくて済む一方、PBビジネスでは、アマゾンは商品を保管し、輸入し、清算しなければならないのだ。

価格競争でもAmazonベーシックは分が悪いのかもしれない。例えば、Amazonベーシックの単4アルカリ電池20個セットは718円(税込)で売られているが、モノタロウのPBによる単4アルカリ電池40個セットは2倍の容量で1309円(税込)、楽天では三菱電気の単4アルカリ電池20個セットが640円(税込)で売っている。