台頭するAmazonのデジタル広告部門は二強の一角を崩せるか?

Amazonは、GoogleやFacebookに次ぐ、紛れもないナンバー3のデジタル広告プラットフォームになりました。しかし、Amazonの広告ビジネスは、複占(Duopoly)を形成するGoogleやFacebookに太刀打ちできるでしょうか?

少なくとも短期的にはそうはなりません。Googleは、AmazonやFacebookよりもあまりにも先を行っています。Googleの広告収入は2018年に1,163億ドルで、前年から210億ドル増加しました。

Amazonの広告ビジネスは、当時の46億ドルから101億ドルに倍増しましたが、Googleを追いかけるためには200%以上の成長を継続する必要があります。 そうして初めて、Googleの1,000億ドルの背中が見えるでしょう。

Amazonにとって、Facebookの550億ドルの2018年の売上に追いつくことは、より達成しやすいようです。 Amazonの広告収入は2014年のFacebookの10分の1の大きさでしたが、現在では20%近くに達し、その成長率ははるかに上回っています。

Amazon Prime Videoは広告を採用しません。Amazonは最近、バイヤー向けのセルフサービス広告技術プラットフォームを立ち上げたばかりで、5月に買収したSizmek広告サーバー事業を統合しています。

Amazonの広告ターゲティングと買い付けインターフェースはそれほど洗練されておらず、消費財マーケターにとっては、オンラインマーケティングキャンペーンの主軸として採用するまでには至っていないようです。

もしAmazonがプラットフォームテクノロジーを著しく改善し、パブリッシャーネットワークとそのストリーミングビデオ製品で広告在庫を強化した場合、数年でFacebookに追いつくかも知れません。

ただ、課題があります。Prime VideoがNetflixやDisney、Apple等との厳しい競争のなかでユーザー体験を悪化させる広告挿入に踏み切ることは難しいでしょう。Amazonの最大のeコマースの利点の1つである「摩擦のない購買体験」、つまり、プラットフォームに顧客を引き留めようとしない態度は、特に1日あたりの平均的なユーザーの利用時間を独占するGoogleとFacebookと比較して、広告事業にとって不利に働きます。利用時間は広告ビジネスの重要な尺度です。

Amazonが優位なのは電子商取引で蓄積する消費者の購買データです。Amazonのマーケットプレイストランザクションとプライム会員のデータセットは、「直接的」にAmazonの広告プラットフォームに接続されていません。しかし、Amazonがeコマースデータを広告主に公開し、さまざまなデータとのリンクが可能にすることで、広告主が高価格のアイテムを定期的に購入する顧客をターゲットできるのならば、GoogleやFacebookとの強力な差別化要因になります。

しかし、Amazonにとって広告は小さなビジネスに過ぎません。購買データをAmazon DSPと直接接続してマイクロターゲティングし、購買履歴を基にした広告に追いかけ回された結果、利用者がAmazonでの購買を差し控えるようになると、逆効果を生んでしまいます。また、ケンブリッジ・アナリティカ以降の世界では、購買データのマーケティング利用には厳しい視線が注がれつつあります。AmazonのDSPを介してAmazon以外の在庫に対し購買データに基づいたターゲティングを実行した場合、それは近年針のむしろにされているデータブローカーと同様のデータ利用に当たります。Facebookはケンブリッジ・アナリティカ事件以降、厳しい非難を浴び、サードパーティデータ企業とのデータ統合機能を取り除いています。このリスクはリターンと余りに不釣り合いだと考えられます。

Amazonは阿里巴巴が採用するビジネスモデルを参考にしているとみられますが、これ以上の事業拡大にはとても困難なトレードオフを解決しないといけないでしょう。

参考文献

Alphabet Investor Relations - Investor Relations - Alphabet

Facebook Invesror Rerations

Investor Relations | Amazon.com, Inc. - IR

Amazon Advertising

Image via Amazon press room