恐竜を絶滅させた彗星は太陽系の端から来た、とする新理論が登場

何十年もの間、恐竜の絶滅についての有力な説は、火星と木星の間にある帯状の小惑星が惑星に衝突し、地球上のほとんどの生物を一掃する大惨事を引き起こしたというものだった。

しかし、ハーバード大学の新しい研究は、ハルマゲドンを引き起こす物体は、当初信じられていたよりもはるかに遠くから来たという説を提唱している。

この新しい理論によると、氷河期の始まりは比較的近くにある小惑星からではなく、太陽系の端から来た長距離彗星のようなものが原因となったという。

チームは木星からの重力が彗星を太陽系に引き込んだ、と主張している。その時点で、論文を共著したアヴィ・ローブ教授とハーバード大学の博士候補アミール・シラージによると、「木星は一種のピンボールマシンのような役割を果たしている」という。木星の重力が彗星を軌道に乗せて太陽に接近させ、その潮汐力が彗星をバラバラにしたというものだ。彗星の破片の一部は地球の軌道に入り、そのうちの1つはボストンほどの大きさでメキシコの海岸に衝突した。

この理論はまた、この衝突によって引き起こされたいわゆるチクスルブ・クレーターのような大きな衝突クレーターは、炭素質コンドライト(石質隕石のうち、有機物などさまざまな化合物の形で炭素原子を含むコンドライト)でできている可能性が高いという仮説も立てている。帯状帯にある小惑星のうち、炭素質コンドライトでできているのは約10%にすぎないという。

「私たちの仮説は、地球の歴史上で確認された最大の衝突クレーターと、過去100万年以内の最大の衝突クレーターの組成を説明している」と著者たちは書いている。

シラージとローブの斬新な理論は科学者の間で注目を集めているが、批判もされている。彼らの研究にはいくつかの本質的な問題があると考えている、とコロラド州ボルダーにあるサウスウエスト研究所の惑星科学者ビル・ボトケはニューヨーク・タイムズ紙に語っている。

例えば、提案されたモデルは、長周期彗星が実際に太陽に引き離される頻度を過大評価している、とボトケは言う。「もし誰かが本当に彗星であることを望んでいるのなら、まだ微調整の余地はある。私はただ、それを主張するのはとても難しいと思っている」。

参考文献

Siraj, A., Loeb, A. Breakup of a long-period comet as the origin of the dinosaur extinction. Sci Rep 11, 3803 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-82320-2