DeepMind出身者がAIを駆使し、グリーン素材開発を急加速する［ブルームバーグ］

(Bloomberg) – 昨年秋にChatGPTが流行して以来、企業は人工知能（AI）がわれわれの生活を便利にする方法を数多く宣伝してきた。超人的なバーチャル・アシスタント、家庭教師、弁護士、医師などだ。

超人的な化学エンジニアはどうだろう？

ロンドンを拠点とする新興企業Orbital Materialsは、まさにそれを実現しようとしている。このスタートアップは、ChatGPTのようなツールの背後にある手法である生成AIを、クリーンエネルギー技術の開発を加速させるために応用しようとしている。基本的には、持続可能なジェット燃料やレアアース（希土類）鉱物を使用しないバッテリーのような製品に最適な処方を特定するのに十分な強力で鋭いモデルを作ることである。

Orbital Materialsの共同設立者であるジョナサン・ゴドウィンは、現在エンジニアが飛行機の翼や家庭用家具などの設計をモデル化するために使っているソフトウェアと同じように、アクセスしやすく効果的なシステムを想像している。

「それは歴史的に、分子科学にとっては難しすぎるものでした」と彼は言う。

ChatGPTが機能するのは、テキストを予測することに長けているからである。同じアイデアが化学の分野で機能するためには、AIシステムは新しい分子が研究室だけでなく現実の世界でどのように振る舞うかを予測する必要がある。

いくつかの研究者や企業は、より新しく環境に優しい材料を探すためにAIを導入している。1990年代に設立された材料発見企業シミックス・テクノロジーズは、売却後に閉鎖された。より最近の企業は、石油化学の代替品やプログラミング・セルの製造に力を注いでいる。

それでも、地球を脱炭素化するために必要な多くの材料は、まだ技術が確立されていない。

新しい先端素材が発見から市場に出るまでには数十年かかる。この時間軸は、ネット・ゼロ目標の達成に向け、排出量の急速な削減を目指す企業や国家にとっては遅すぎる。

材料科学のスタートアップ、VSParticleの共同設立者であるアイケ・ファン・フトは、「今後10年、もしくはそれよりも早く実現する必要があります」と語る。

AIの研究者たちは、その手助けができると考えている。Orbital Materialsを立ち上げる前、ゴドウィンはグーグルのAI研究所であるディープマインドで3年間、先進的な材料発見の研究をしていた。その研究所は、新薬やワクチンの探索を加速させるタンパク質構造予測モデルAlphaFoldをリリースした。ChatGPTのようなツールの急速な普及と相まって、彼はAIがすぐに物質世界を征服できると確信した。

「私が10年かかると思っていたことが、わずか1年半で実現したのです」と彼は言う。「物事はどんどん良くなっています」