データ・クリーン・ルームとは?

過去2年間で、データ・クリーン・ルームはプログラマティック広告のシーンで爆発的に普及しました。この文章では、データ・クリーン・ルームの詳細とマーケティング上の利用価値について考えてみましょう。

最も基本的なデータ・クリーン・ルームは、プライバシーに基づく技術で、企業が2つ以上のファーストパーティデータをマージしてマッチングし、両方のデータセットから情報を得て新しい視聴者や分析セグメントを作成することを可能にします。

初期のデータ・クリーンルームは、GoogleのAds Data Hub(Ads Data Hub)、Amazonのマーケティング・クリーンルーム、FacebookのAdvanced Analyticsなど、主要なデジタル広告企業によって作られたデータ共有製品でした。

主要な大手テクノロジー企業は、ユーザーレベルのデータをベンダーや広告主に開示することなく、ファーストパーティデータに基づくキャンペーンのターゲティングとアトリビュートを継続する方法として、クリーンルームの技術を利用した。

最初の大きなブレークスルーとなる参入者は、Ads Data Hubでした。2018年以降、広告主が明示的な同意なしにGoogleユーザーを再ターゲティングすることはGDPR違反となるため、Ads Data Hubは欧州でGoogle広告サーバーデータを使用する唯一の方法となっています。

Ads Data Hubでは、広告主はファーストパーティデータをBigQueryにアップロードして、Googleのイベントレベルの広告キャンペーンデータと結合することができます。その後、Googleは自社の巨大なオーディエンスグラフを使い、マップ、Chrome、Gmail、YouTube、検索、Googleアドテクスタックなどの製品から得た独自のデータで広告主のデータを強化することができます。これは、Ads Data Hubがユーザーレベルのデータを広告主に送り返さないため可能なのです。

これらの仕様は、プライバシー関連の規制をクリアしながら広告主が柔軟なデジタルマーケティングを行えるよう意図したものです。「Ads Data Hubの結果はユーザーグループごとに集計されるため、Googleはより完全なデータを提供しながらも、エンドユーザーのプライバシーを維持することができます」とGoogleは説明しています。

Googleの広告サーバーは、サードパーティのCookieを使用してウェブ上のすべてのオーディエンスを追跡している(少なくともChromeでは)。Ads Data Hubではユーザーレベルのトラッキングはできないが、Google自身のオーディエンスデータを組み込んでいるため、キャンペーンで使用されるデータはよりリッチなものになります。

例えば、リターゲティングや個人に紐づく1万人のユーザーレベルIDを持つよりも、Ads Data Hubキャンペーンでは、例えば、そのうちの5千人の新規顧客がシカゴやセントルイスといった中西部の都市で追加されたことを広告主に知らせることができるかもしれません。検索やYouTubeのデータもAds Data Hubに含まれるため、Googleはレストランチェーンに対して、新規顧客の獲得が、YouTubeで熱心に地元のスポーツをフォローしている人々や、最近試合のチケットを検索した人々から偏っていることを知らせるかもしれません。

広告主はこのようなインサイトをCRMに追加することはできませんが、有用な分析であることに変わりはないでしょう。

2020年、Ads Data Hubは純粋な分析から大きな一歩を踏み出し、オーディエンスの活性化、つまりターゲット広告の購入が可能になりました。しかし、データはGoogleのファーストパーティIDで強化されているため、Ads Data Hubオーディエンスを使用できるDSPはGoogle Display & Video 360のみとなります。

同様に、Amazonのクラウドベースのクリーンルームは、分析用かAmazon自身のDSP内でのみ使用可能です。

「独立系」のクリーンルーム

大手デジタル広告企業のクリーンルームは、その使用が会社製品の中に限定されています。ここに独立系のクリーンルームが独自のバリュープロポジション(提供価値)をひねり出せると踏んでいるようです(これまでことごとく敗北し続けましたが)。

独立系は顧客との利益相反のない「独立性」を価値の一つとして打ち出しています。独立したデータクリーンルームは、広告キャンペーンに利害関係のない独立したサードパーティによって運営されています。その唯一の目的は、データを保管し、異なるデータセット間でマッチングを実行することです。

広告主は、独立したクリーンルームを使用して、サプライサイドや他のデータパートナーとともにデータをクラウドにロードし、オーディエンスを同期させることができます。広告主は独立系のDSPを使用でき、クリーンルーム内の広告主とセルサイドのデータ・パートナーは、ファーストパーティのデータセットを強化することができます。

独立系のもう一つのベネフィットは、相互運用性です。Googleらがユーザーデータを内部的なIDのもとに管理し、外部のデータとのマッチングを原則認めていないのに対し、独立系はUnified ID(電子メールと電話番号に基づくプログラマティック・ウェブID)と呼ばれる共通識別子によって、相互運用性を担保していると唄っています。

ただし、この業界では大手企業がユーザーとそのデータの大半を寡占しているのが実情であり、Unified IDが対象とする範囲は限定されたものであることを留意しないといけません。

このカテゴリでは、Snowflakeが有力で、LiveRampのSafe Haven、TransUnion傘下のNeustar、Habu、InfoSumなどの新興企業も参入しています。