従業員の幸福と会社の業績は”リンク”している

従業員の幸福と会社の業績は”リンク”しているという興味深い研究が話題を呼んでいる。

興味深い内容を見出したChristian Krekel(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)、George Ward(MIT Sloan)、Jan-Emmanuel De Neve(オックスフォード)による研究は、調査機関であるギャラップ(Gallup)によって集められたデータに基づいている。調査はギャラップが行った390の異なるデータセットを基に、73カ国の49業種、230の別々の組織にわたる約190万人の従業員を対象としている。

著者らは、企業の業績に関する4つの潜在的な尺度である、顧客忠誠心、従業員の生産性、収益性、および従業員の離職率について検討した。彼らは、従業員の満足度が顧客ロイヤルティと実質的に正の相関があり、従業員の離職率と負の相関があることを見出した。さらに、労働者の満足度は、生産性と収益性の向上と相関していた。

著者らは「ここに提示した証拠は、従業員の幸福、従業員の生産性、および堅調な業績の間に強い、前向きな関係があることを示唆している。社会の幸福を高めることは政策決定者にとっての中心的な目標であり、それはビジネス界の利益に反対しない目標である」と結論づけている。

参照されているAlex Edmansの論文によると、仕事の満足度が高いほど、長期収益率、現在の企業価値、将来の収益性、および驚くべき収益の伸びと関連があることを、米国や英国などの柔軟な労働市場でのみ見いだした。しかしながら、スカンジナビア諸国やドイツのようなより柔軟ではない労働市場では、相関を見出すのが難しかったという。

米国型の株主資本主義にとっては、従業員は富を生み出すための道具なので、とにかく酷使したほうがいい、と考えられていた。だが、この研究では株価を上げるためにも「幸福」のような従業員の心理が重要であることが、示唆されている。職場における従業員のパフォーマンスを向上させるための科学的なアプローチはGoogleのようなテクノロジー企業で調査、実践されている。ブラック企業大国であり、野球少年に肩を壊すような投球を強いる日本社会には取り組まれるべき大きな潜在性があるに違いない。

感想

論文には従業員の幸福と株価の関係を調べるところがあるけれども、そもそも企業の価値を株価で測るというのは、現代の資本主義の課題ではないだろうか。株主資本主義は企業は株価を上げるために色々なことをするが、それがどれだけ意味のあることなのだろうか(僕は都度都度株価を上げていくのを是とするスタートアップの創業者なのだが)。

参考文献

Christian Krekel, George Ward, Jan-Emmanuel De Neve (2019)"Employee Wellbeing, Productivity, and Firm Performance"

Edmans, A.,(2012) "The Link Between Job Satisfaction and Firm Value With Implications for Cor-porate Social Responsibility," Academy of Management Perspectives"