3Dシリコン電池のEnovix、Q2中にSPACと合併上場へ

バッテリーメーカーのEnovixは、11億ドルと評価される取引で特別目的買収会社(SPAC)を使用して株式公開する準備ができた、と発表した。同社はそれに伴い私募により4億500万ドルを調達したと明らかにした。

2021年の第2四半期に取引が完了する予定で、この取引により、統合後の企業価値は約11億2800万ドルになると見積もられている。

Enovixによると、同社は現在の業界生産の5年先を行くエネルギー密度を持つ先進的なリチウムイオン電池の設計、開発、サンプリングを行っている。同社の最初の製品には、900Wh/Lという高いエネルギー密度を持つ電池が含まれている。この画期的な進歩は、シリコンバレーやムーアの法則の基準では控えめなリチウムイオン電池業界の30年間のエネルギー密度向上(年率4.4%未満)の軌跡を変えるものである。従来の「ゼリー状」のリチウムイオン電池とは異なり、Enovixの製品は、精密なステンレス鋼に包まれ、高速精密積層プロセスで製造されている。この独自の3Dセル・アーキテクチャにより、Enovixは負極の唯一の活性リチウムサイクル材料としてシリコンを使用することが可能になったという。

同社は初の商業工場を建設中で、今年後半には顧客向けにシリコンリチウムイオン電池を生産する準備が整う予定だ。カリフォルニア州フリーモントにある小規模工場では、ラジオやスマートウォッチなどの小型機器向けの電池を製造する予定だ。Enovix社は、スマートフォン用の電池も製造する第2工場の立地を探しており、2025年以降に電気自動車用電池の販売を開始することを目指している。

Enovixには多くの競合企業がいる。全固体電池を製造するQuantumScapeは昨年、SPACとの取引で株式を公開し、時価総額は220億ドル以上に達したが、2026年までには意味のある収益は見込めないと予想している。電気バスやその他の商用車用のバッテリーを製造している中国資本のMicrovastは今月、ニューヨークを拠点とするSPACとの取引で約30億ドルの価値で株式を公開すると発表した。

電気自動車の普及、太陽エネルギー貯蔵の改善、拡張現実やバーチャルリアリティなどの主要技術の進歩には、長持ちし、急速充電が可能で安価なバッテリーが不可欠だ。

Image by Enovix