日本政府、5.5兆円のESG投融資でのグリーンウォッシュを警戒

日本政策投資銀行が5.5兆円のESG融資・投資を計画。貸し手は、一部の融資計画が「大ざっぱな」目的であることをリスクと見ている。グリーンウォッシュの懸念である。

日本政府、5.5兆円のESG投融資でのグリーンウォッシュを警戒
炭素集約型の製造業が経済を支える日本では、サステナビリティ・リンク・ローンやトランジション・リンク・ローンの人気が高まっています。Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

(ブルームバーグ) -- 日本政府が支援する銀行が持続可能な目的のために約400億ドルを支出することになり、企業がグリーンウォッシュしていないか資金使途を精査することになった。

パンデミック時に資金提供で企業を支援した日本政策投資銀行(DBJ)は、持続可能な資金調達を強化する構えだ。2021年4月からの5年間で、融資・投資総額の約40%、5兆5,000億円を環境・社会・ガバナンス(ESG)の目的に充てることを明らかにした。

DBJの執行役員で経営企画部サステナビリティ経営室長の原田文代氏はインタビューで、「この先、目標が大雑把な融資計画も出てくると思われる」と述べた。「グリーンウォッシングが発生しないよう、各融資計画を厳しく見ていくつもりだ」。

この金融機関の姿勢は、規制当局が持続可能性の証明に対する監視を強化しようとする世界的な動きと一致している。ゴールドマン・サックス・グループは、ESG基準を用いて投資を行うファンドについて米国での調査に直面しており、一方、誤解を招くような主張の証拠を探している警察は、DWSグループのフランクフルト事務所を家宅捜索した。

炭素集約型の製造業が経済の重要な部分を占める日本では、持続可能性関連融資や移行期関連融資が人気を集めている。このような融資は、グリーンボンドのように資金が使われるプロジェクトの詳細を示すのではなく、借り手の目標を設定するものである。投資家の中には、サステナビリティ・リンク・ボンドによって借り手がESGファンドを不適切に利用する可能性があると指摘する人もいる。

ブルームバーグがまとめたデータによると、日本の発行体は22億ドルのトランジションボンド(温室効果ガス排出削減に資するプロジェクトへの投資を使途とする債券)を販売しており、これは世界全体の約40%に相当する。

「サステナビリティ・リンク・ファイナンスやトランジション・ファイナンスの案件には、その目的から見て疑わしいものが含まれている可能性がある」と、原田は述べている。

-- 取材協力:ベス・トーマス

Ayai Tomisawa, Takashi Umekawa. Japan on Alert for Greenwashing as It Lends $40 Billion for ESG.

© 2022 Bloomberg L.P.

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