欧州ベンチャー投資、14兆円に到達

要点

欧州のベンチャー投資額が前年の約3倍の1210億ドル(約13兆7,300億円)に到達。世界的なブームが欧州の実績からも裏付けられた。日本は上半期で1000億円程度と想像を絶する差がついている。


2006年にSkypewを創業したNiklas Zennströmが設立したVCであるAtomicoは、12月7日、年次レポート「State of European Tech」を発表し、今年の欧州へのベンチャー投資額は1,210億ドルに達したことを示した。

初めて1,000億ドルの大台を突破したのは、2億5,000万ドル以上の後期段階(レイターステージ)の企業のラウンドが大きくなったことによるところが大きく、過去12カ月で10倍の伸びを示した。2021年の最初の9ヵ月間だけでも、2億5,000万ドル以上の資金調達ラウンドは57件あり、1億ドル以上のラウンドは150件以上あった。英国では、1億ドル以上の資金調達が68件あり、これは欧州におけるこの規模の資金調達の37%に相当した。

欧州ではベンチャー企業が記録的な資金を調達しているにもかかわらず、アーリーステージの企業は圧迫されている。2021年の最初の9カ月間に投資されたベンチャーキャピタルのうち、今年設立された企業に投資された割合は1%未満で、これは例年1~3%の割合だ。

公開・非公開市場における欧州のハイテク企業の株式価値総額は、2021年に初めて3兆ドルを突破。欧州発のテクノロジー分野の株式価値が初めて1兆ドルに達するまでには、何十年もかかった。3年前、2018年12月に欧州はそのマイルストーンに到達した。しかし、1兆ドルから2兆ドルへは24カ月で到達し、次の1兆ドルはわずか8カ月達成されている。

年次報告書のデータを作ったDealroomによると、欧州には現在、10億ドル規模の「ユニコーン」企業が321社あり、そのうち98社が今年に入ってから誕生した。また、100億ドル以上の「デカコーン」と呼ばれる企業は、Klarna、Revolut、Checkout.comなど26社ある。

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2021年に1,210億ドルまで跳ね上がった欧州のベンチャー投資額。2020年の約3倍の規模。出典;アトミコ「State of European Tech」
設立後から時間を経ている中期、後期の企業の調達額が、初期段階の企業の調達額を圧倒している。出典;アトミコ「State of European Tech」

今年は、ヨーロッパにおけるM&Aや新規株式公開などの「エグジット」においても記録的な年となった。今年、欧州のハイテク企業のエグジットでは、合計で2,750億ドル相当の企業価値が生み出された。注目すべきは、英国のフィンテック企業Wiseの超大型直接上場や、フィンランドのフードデリバリー企業Woltの81億ドルでの米国のライバルDoorDashへの売却などの案件。

Atomicoのインサイト部門の責任者であるTom Wehmeierは、CNBCに対して次のように述べている。「今年は、欧州のハイテク企業にとって決定的な年となりました。「数字で見ると、ヨーロッパのハイテク企業はかつてないほど速く価値を生み出していると思います」。