車買いすぎの米国人、EVでも同じ傾向
9月14日(水)、米国ミシガン州デトロイトで開催された2022年北米国際自動車ショー(NAIAS)で展示された電気自動車「フォードF-150 ライトニング」。Photographer: Emily Elconin/Bloomberg

車買いすぎの米国人、EVでも同じ傾向

車の買いすぎは、EVの出現以前からのアメリカの伝統だ。米国は結局のところ、ハマーがショッピングモールに行くのに適した車になると判断した国なのだ。しかし、内燃機関車の買いすぎは、通常、必要以上の座席、荷室、馬力を手に入れることを意味するが、EVの場合は、電池を手に入れすぎることを意味する。

ブルームバーグ

(ブルームバーグ)-- 米国の電気自動車(EV)の買い物客にとって、航続距離に関するマジックナンバーは約300マイル(約482キロメートル)のようだ。ブルームバーグが委託した調査では、回答者5,500人のうち3分の2近くが航続距離300マイル以上で十分だと答え、200マイル以下で落ち着く人は1割にも満たなかった。2021年にコックス・オートモーティブが行った調査でも、EVを検討している人の平均希望走行距離は341マイルと、同様の結果が得られている。

しかし、アメリカのドライバーが求めるものと、実際に必要なものの間には、明らかな断絶がある。アメリカの自動車旅行の約95%は30マイル以下だ。

コックス・オートモーティブ・モビリティのEV研究開発ディレクターであるステファニー・バルデス=ストレイティは、「私たちは今、電動化の教育段階にある。消費者に理解してもらっているところだ。私はどれくらいの頻度で運転するのか? どこで充電するのか? 自分のライフスタイルに必要なものは何なのか? 消費者の理解が深まれば、400マイルの航続距離を持つ車は必要ないと気づくかもしれない」

今のところ、自動車メーカーはアメリカ人の航続距離に対する大きな期待に応え、より大きく長寿命の電池を搭載したEVをより多く発売し、小型モデルを廃止している。現在米国で販売されている80車種以上のEVのうち、BMWミニクーパー、日産リーフのベースモデル、ポルシェ・テイカンの小型電池バージョンの3車種を除くすべての車の航続距離が200マイル以上である。また、40%近くが300マイル以上の航続距離を実現している。

車の買いすぎは、EVの出現以前からのアメリカの伝統だ。米国は結局のところ、ハマーがショッピングモールに行くのに適した車になると判断した国なのだ。しかし、内燃機関車の買いすぎは、通常、必要以上の座席、荷室、馬力を手に入れることを意味するが、EVの場合は、電池を手に入れすぎることを意味する。

EVに搭載されるリチウムイオン電池は、最も高価で重い部品だ。そのため、肥大化した電池は二重の意味で無駄となる。購入者は、ほとんど利用することのない航続距離に数千ドルを費やし、車は余分な重量を運ぶために数キロワットを費やしている。また、電池が増えるということは、温室効果ガスの排出量が増えるということでもあり、そもそもEVに乗り換える原動力が損なわれることになる。

アメリカ人が求めるEVを製造するために必要なコストについては、実際に計算してみるとよくわかる。ブルームバーグのEV格付けに掲載されている80以上のモデル(現在米国で販売されているすべてのモデル)全体の効率の中央値は、電池1kWH(キロワット時)あたりの航続距離が3.3マイルである。つまり、300マイルの航続距離には約91kWhが必要ということになる。

BloombergNEFの最新の価格調査によると、自動車メーカーの電池パックのコストは1kWhあたり平均118ドルだ。つまり、91kWhの電池1個の製造コストは、11,000ドル近くになる可能性が高い。BloombergNEFによると、1kgあたりのエネルギー密度は平均174W/hであり、11,000ドルの電池は通常1,100ポンド以上の重量となる。

この重量と費用が、通勤や買い物などの移動に見合うかどうかは、ドライバーや自動車メーカーにとって未解決の問題である。スウェーデンのEVメーカーであるポールスターは、航続距離270マイル、78kWhの電池を搭載したパフォーマンスセダンを販売しているが、「電池が1KWh増えるごとに、消費者にコストがかかり、CO2が増える」と同社のフレドリカ・クラーレンは言う。

ヨーロッパ、アジア、その他の地域で小型のEVが次々と販売されているのとは対照的に、アメリカ市場では大型のEVがあふれている。しかし、EVの普及率が5%程度にとどまっているアメリカでは、作りすぎたEVは必要悪なのかもしれない。ハマーに乗るショッピングモール利用者に、まずEVのハマーへの乗り換えを考えてもらい、やがて控えめなEVセダンへの乗り換えを考えてもらうためのものである。

「より多くの人がEVを信頼し、自信を持って購入できるようにしなければなりません」とクラーケンは言う。「ICE車から飛躍するためには、航続距離の長さを実感してもらう必要があるのです」。

バルデス=ストレイティによれば、多くのドライバーがEVを使いこなし、充電の習慣に慣れるにつれて、航続距離への不安が信頼に変わり、2度目のEV購入者はダウンサイジングに傾くかもしれない。その頃には、低価格で航続距離の短いモデルなど、より多様な車種が提供されていることだろう。「大量に普及させるには、すべての人に受け入れられる価格帯と、ライフスタイルに合ったものが必要です」。

また、長期的には、アメリカのEVドライバーは、巨大で高価な電池を使わずに、望む航続距離を確保できるようになる可能性がある。資金力のある新興企業や大手自動車メーカーが、かさばることなく豊富な航続距離を実現する代替電池化学の開発に取り組んでいるのだ。これらの選択肢がリチウムイオン電池パックのトレンドに沿うものであれば、いずれはより広い市場で利用できるレベルまで価格が下がるだろう。しかし、今のところ、長距離走行が可能で、安価で軽量なEVは、まだ空想の域を出ていない。

--Kyle Stockの協力による。

Ira Boudway. Americans Have Always Bought Too Much Car. Now They’re Doing It With EVs.

© 2022 Bloomberg L.P.

翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ

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