米国のEV・再エネ巨額補助金が欧日韓への投資を吸引

米国のEV / 再エネ産業に対する莫大な補助金は、欧州からは脅威と受け取られている。米中の熾烈な「サプライチェーン囲い込み競争」は、日本を含む「その他の勢力」に強い圧力を掛けているようだ。


フランスとドイツの経済担当大臣は今週ワシントンを訪れ、クリーンエネルギーに対する3,700億ドルの米政府の補助金によって引き起こされる「不公正な競争」に対する懸念を明らかにする予定だ。

補助金の法的根拠であるインフレ抑制法(IRA)は米国のサプライチェーンを支援し、EV電池組み立てのための鉱物加工における中国の優位性に対抗することを意図している。

IRAは、中国が成功したサプライチェーンの囲い込みを模倣することを主眼としている。2023年からは、EV用電池の鉱物の40%と部品の50%を米国または自由貿易協定(FTA)加盟国から調達しなければ、税額控除の対象にならないと規定されている。2027年と2029年には、この要件は鉱物の場合は80%、部品の場合は100%に引き上げられる予定である。

IRAが欧州に及ぼす正確な影響は測り知れない。欧州の景況感は昨年末に急落し、電池関連の新興企業ノースボルトやスペインのエネルギー企業イベルドローラなど、一部の産業界や新興企業はすでに米国に軸足を移している。テスラは最近、ドイツでの電池工場建設計画を一時中断し、同国での13億ドルの州補助を見送り、代わりにテキサス州に建設すると発表した。

米地方政府の支援策もまた、EV・再エネのサプライチェーンの引きつけにおいて大きな成果を挙げている。長年、対内投資をめぐって互いに争ってきたいくつかの州は、昨年のIRAの成立を受け、補助金制度を一新した。

  • ジョージア州では、ノルウェーに本拠地を構える新興電池フレイルが、州から約3億6,000万ドル相当の補助金を受けた後、25億7,000万ドルの工場投資を発表した。地元のコウェタ郡開発局は、フレイルに20年間の固定資産税減税と2億5,000万ドル相当の雇用創出助成金を提供した。
  • ミシガン州は10月、中国の電池会社Gotionが23億6,000万ドルの工場を建設する契約を成立させるため、少なくとも7億1,500万ドルのインセンティブを付与した。テキサス州、ジョージア州、ケンタッキー州、サウスカロライナ州、イリノイ州もこの工場の誘致に乗り出していた。
  • オハイオ州は10月、州間高速道路71号線近くの用地と1億5,600万ドルのインセンティブを提示し、ホンダとLGエナジーソリューションとの間で44億ドルのEV電池契約を取り付けた
  • IRAが成立する3カ月前の昨年5月、インディアナ州はステランティスとサムスン電子に、1億8650万ドル相当の税額控除、工員育成補助金などの経済優遇策を提供した。
  • テスラは先月、ネバダ州に36億ドルを投じ、バッテリーセルの増設と同社初の電気セミトラック工場を建設する計画を発表した。同社は2014年からネバダ州で操業しており、州の莫大な補助金を享受している。