中国のEV / 自動車業界を席巻する未曾有の価格競争

年初のテスラの大値下げが中国の各メーカーに波及し、未曾有の価格競争が続いている。昨年末に補助金が切れ、EV需要が一服したことや7月に排ガス規制のレベルが上がり、規制不適格な在庫が生まれると予見されることが価格競争の引き金となっているようだ。


10月、テスラは、上海郊外にあるギガファクトリーで生産されるモデルの価格を引き下げた。1月にはさらに値引きが行われ、テスラの現地生産車は昨年より14%も安くなり、場合によっては米国やヨーロッパより50%近くも安くなった。これは、昨年末に中国政府のEVへの補助金を終了したことを受けての動きだった。

この動きに、ライバル企業も追随せざるを得なくなった。その後、XpengやBYDといった国内外のEVメーカーが続々と価格競争に参入し、3月上旬には国有企業である東風汽車集団のような従来型の自動車メーカーにも値下げが広がった。

「参加者」の中にはフォルクスワーゲン(VW)やメルセデス・ベンツなどの海外の大手メーカーが含まれている。フォードの電動SUV「マスタング・マッハE」は基礎価格が20万9,900元まで下がり、米国より約3分の1安い。BMWはEVセダン「i3」を10万元(190万円)以上値引きしていると現地メディアが伝えている。

テスラに加え、BYDももう一段の値下げを実施する可能性があると、モルガン・スタンレーのアナリストTim HsiaoとCindy Huangは3月19日のメモに書いている。テスラが始めた価格競争は、予想以上に早く、深刻なものとなり、「市場の再編を加速させるだろう」と彼らは買いている。

値下げにはもう一つの引力がある。それは排ガス規制だ。厳格化された「国6b」が7月に施工される予定で、ディーラーは不適合の数十万台のガソリン車を抱えることになるかもしれないと言われる。今月初め、上海フォルクスワーゲン・オートモーティブは、5億ドル以上の現金によるガソリン車購入のインセンティブを実施。これは他の40社以上が同様のインセンティブ付与をしたのに続くものだ。

苦境に陥っているディーラーも少なくないようだ。昨年、ゼロ・コロナのロックダウンによって自動車の生産と販売が中断され、困難な時期に直面していたという。ある時期、上海では1カ月間、1台の車も売れなかったという。昨年はわずか20%のディーラーが利益を上げただけで、2022年には2,000以上のディーラーが閉鎖したとされる。

フィッチ・レーティングのアナリストは先週木曜日のレポートで、「中国の自動車市場で進行している価格競争は...第2四半期に拡大し、2023年には自動車のバリューチェーン全体の収益性を侵食する可能性がある」と述べている。多くの自動車メーカーがこのキャンペーンは期間限定のものだと述べている一方で、フィッチのアナリストは、中国の消費者はさらに厳しい値下げを期待して買い控えをすると考えていると述べた。

華西証券のチーフ自動車アナリスト、Cui Yanは先週月曜日のメモで、今回の値下げは在庫処分とは別に、業界の再編成に拍車をかけるだろう、と述べた。Cuiは、財務の健全な国内自動車ブランドが市場でより大きなシェアを獲得し、業界全体の統合を加速させると予想している。

中国自動車工業会(CAAM)は先週、中国の主要自動車メーカーが3月に販売促進のための価格競争を開始したことを受け、価格競争の終結を求めた。CAAMは値下げは販売減速と在庫の蓄積に対する長期的な解決策にはならないとしている。同協会は、業界の健全な発展を確保するために「正常な運営に戻る」べきだと述べている。