トヨタ、EVの新技術採用を記者団に公開[ブルームバーグ]
2021年8月23日月曜日、愛知県豊田市のトヨタ自動車元町工場。 写真家 Akio Kon/Bloomberg

トヨタ、EVの新技術採用を記者団に公開[ブルームバーグ]

トヨタ自動車は今月、顧客やサプライヤー、投資家に対し、電動化に真剣に取り組んでいることを示すキャンペーンを展開した。

(ブルームバーグ) – トヨタ自動車は今月、顧客やサプライヤー、投資家に対し、電動化に真剣に取り組んでいることを示すキャンペーンを展開した。

世界最大の自動車メーカーは先週、多くのジャーナリストを愛知県豊田市にある本社近くの3つの工場に招待し、バッテリーをベースにした電気自動車(EV)の生産を拡大するために開発している技術や、有名な生産システムの講習会を行った。

前回のワークショップは、株主総会を控えたトヨタにとって重要な時期に開催され、世界の自動車産業が電動化と自動化にシフトする中、同社がこのまま手をこまねいているわけではないと投資家に納得させることに成功した。トヨタは、ソリッドステート・バッテリーを商業化し、10車種の新型EVを展開し、2026年までに年間150万台のバッテリー電気自動車(BEV)を販売する計画を詳述した。

今回は、東京から新幹線で2時間、バスで少し移動した後、記者たちは貞宝工場のエンジニアたちから、トヨタが2026年か2027年にバッテリーEVのフルラインナップとともに展開することを目指している、バイポーラ型リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーの開発の進捗状況について説明を受けた。

エンジニアたちは、集まった報道陣に進捗状況を熱心に報告し、このようなプレゼンテーションは初めてで、「自分たちの仕事を世界と共有できて嬉しい」と語った。彼らは、電解質を均一に塗る方法を見つけたことを強調した。それでも、扁平な電池を損傷させることなく素早く継ぎ目なく積み重ねることは、大量生産への大きなハードルとして残っているという。

トヨタによれば、このような電池が成功すれば、航続距離は20%向上し、コストは40%削減され、30分以内に80%まで充電できるようになるという。

翌日、記者たちはトヨタの明知工場に移動し、そこで作業員たちが4,000トンの圧力で溶かしたアルミニウムを巨大な鋳型に入れ、自動車のシャシーの大部分を作る方法を実演した。この方法は最終的にはギガキャストと呼ばれるもので、EVのシャーシを3つのパーツに分割して作ることができる。

今月出版された億万長者の伝記によると、イーロン・マスクがモデルSのおもちゃの模型を見て、エンジニアたちに車の部分全体をダイキャストで作る方法を見つけろと迫った後、テスラが開拓した生産技術だ。ロイターの報道によると、米国のEVメーカーは近い将来、ギガキャスト技術を使ってEVのアンダーボディ全体を一体成型する可能性があるという。

トヨタはまだそこまで到達していない。

先週名古屋で公開されたギガキャストのプロトタイプは、高さ半メートルの1/10スケールモデルだった。しかし、等身大で機能的になれば、トヨタはガソリン車やハイブリッド車と同じように、何百万台ものEVを生産することになるだろう。

ツアーの最後に訪れたのは、トヨタで最も古く、最も大きな工場である元町工場だった。そこでは、エンジニアたちが自走式BEV組立ラインと呼ばれるものを開発している。

EVは工場内に有害なガスを充満させたり、作業員を危険にさらしたりすることがないため、モーターと車輪さえ手に入れれば、生産ラインを自走できるというものだ。一連の監視カメラに接続されたシンプルなリモート・コントロール・デバイスが各車両を工場内を誘導し、産業用ベルトコンベアを不要にする。

トヨタによれば、これによって工場の先行投資が削減され、調整が必要な場合や新モデルが導入された場合の組立ラインの柔軟性が向上するという。

現在でも、施設そのものは目を見張るものがある。セダンやコンパクト・ミニバンから完全なEVやパトカーまで、9つの異なるモデルが1つの混合製造ラインで組み立てられている。人間と機械のコラージュが、複雑だがシンプルなダンスで絶え間なく動いている。工具が組み込まれたローリング・プラットフォームにより、各作業員は1台の車から次の車へと素早く移動することができる。

この振り付けは、トヨタ生産方式(TPS)の教義のもと、何十年もかけて開発されたものだ。TPSは、機能性を強調し、無駄を非難するが、何よりも最終製品を完成させるために、あらゆる工程を段階的に改良することに努めるものである。

ある意味、ギガキャストのような新しいアイデアを受け入れることは、TPS哲学の一部である。毎年1,000万台の自動車を製造・販売できるようになった後も、トヨタが純カーボン排出量ゼロを目指すのであれば、トヨタは柔軟である必要がある。

現在のトヨタの違いは、4月に就任した佐藤幸治CEOの下で、変化を遂げようとしていることについて、より積極的に公言していることだ。

Toyota Keeps Up the Push to Prove It Can Embrace New Technology

By Nicholas Takahashi

© 2023 Bloomberg L.P.

翻訳:吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ

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