GAFAMの明暗分かれる

3ヵ月前に発表された四半期決算では、次々と記録が更新された。Alphabet(Googleの親会社)、Amazon、Facebook、Apple、Micorsoftの欧米テクノロジー企業5社、通称「GAFAM」の収益は、平均で前年同期比40%増、利益は90%増となっていた。S&P 500 Information Technology benchmarkをはじめとするテクノロジー株の指数は、成層圏まで上昇した。

しかし最新の決算では明暗が別れている。AppleとAmazonが発表した7−9月期の四半期決算は、残念な結果となった。これは、世界的なサプライチェーンの危機が大手企業の足かせとなり、両社の市場価値から数千億ドルが失われたことを示している。

Appleは、販売記録の更新が予想されるホリデーシーズン前に、消費者の手元に届けなければならない新製品を多数抱えている。新型のiPhone、Apple Watch、iPad、MacBookなどだ。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は投資家に対し、供給上の制約(特に半導体の不足)がなければ、売上高は60億ドル増加しただろうと述べた。サプライチェーンの制約により、それらの商品の供給が圧迫されるでしょう。クックはこの問題が、前四半期に受けた60億ドルの損害を上回ると予想している。

Appleは正式なガイダンスを発表していないが、アナリストは約1,200億ドルの収益を予測。Appleは、iPadを除くすべてのデバイスの売上が前年同期比で増加すると述べた。iPadの販売台数が増加するには、供給上の問題が大きすぎるという。

一方、Amazonは、人件費とフルフィルメントのコストが急増しているために苦しんでいる。ホリデーシーズンに向けての準備でコスト増が見込まれている。Amazonはウォール街に対し、サプライチェーンの混乱によってホリデーシーズンの買い物ができなくならないようにするために、従業員の雇用や給与の引き上げ、物流関連の支出を増やし、数十億ドルを費やす必要があると警告した。

このような巨額の支出により、アマゾンは年末の3ヵ月間の利益を帳消しにしてしまう可能性があると、経営陣は語った。

最も好ましい位置につけたのはMicrosoftだろう。AppleとAmazonの減速をよそにMicrosoftは時価総額首位の座に再び座ることとなった。

サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は業績発表の場で「2年分のデジタルトランスフォーメーションを2ヶ月で実現した」と述べ、主にクラウドの成長について言及した。四半期におけるAzureおよびその他のクラウドサービスの収益は50%増加し、前四半期の51%にわずかに及ばなかったものの、207億ドルに到達し、初めて200億ドルを超えた。

ビジネス顧客向けのOffice 365の収益も23%増加。これは、高度な機能に対する需要が、より多くの顧客を高額なサブスクリプションに向かわせたためだ。

AlphabetとFacebook(Meta)の決算はほぼウォール街の予測の範疇だった。パンデミック以降、デジタル広告の需要が増進し、テレビ広告などからの乗り換えが起き、両者が販売するデジタル広告価格は著しい値上がりを示してきた。

だが、この四半期では需要側(広告主)で調整が起き、快進撃が一服した様相だ。AppleのiOSのプライバシーポリシー変更は、両者の広告に関連するデータ収集機能に影響を与えたものの、広告予算をかき集めるという点においては、余り影響はなかったのではないだろうか。

ただ、Facebookは最も深刻なリスクに直面していると言える。内部告発者が証券取引委員会(SEC)や議会に持ち込んだ社内文書を基にした報道によって、同社の「不都合な真実」が毎日メディアを騒がしている状況だ。Metaへの社名変更でソーシャルメディアからメタバース企業への転身をイメージ付けているが、ソーシャルメディアの社会への悪影響に対する罰則をウケないといけないリスクを抱えているだろう。