リーンスタートアップの基礎 不確実性を克服するための製品開発手法

リーンスタートアップは無駄を排除しながらイノベーションを生み出す手法です。そもそもスタートアップが直面する不確実性が高い競争環境下では,高い精度の計画策定や予測が極めて困難なことがこの考え方の基礎になっています。

できる限り無駄な時間とコストを省きながら,顧客とのやり取りを通じて仮説を構築・検証するプロセスをもとに”学習”することが効果的だ、とエリック・リースは説きます。この手法では,複雑な計画を立てることを重要視せず,実用最小限の製品(Minimum Viable Product)を基礎に、構築―計測―学習(Building - Measure - Learn)というフィードバック・ループをできる限り速く回して調整を行うことが基本です。リーンスタートアップの手法により、スター トアップは顧客が求めるものに製品を徐々に近づけることができるだけではなく、致死的なダメージを回避することができます。

一見すると、リースの構築―計測―学習フレームワークは「トヨタ生産方式」の「Plan-Do-Check-Act」(PDCA)のコピーのように見えることがあります。実際、彼の本の中で彼は、スタートアップが直面している独自の課題に製造業のアプローチを適用していることを非常に明確にしています。ただし、PDCAが製造業の現場で機能しているように、スタートアップの中で機能するとは限らないため、リースが提案する構築―計測―学習のプロセスを回す方が好ましいのは確かです。

トヨタ生産方式の「三現主義」もまたリーンスタートアップの基礎になっている印象があります。三現主義」とは「現地」「現物」「現実」の「3つの現」を重視し、実際の製造現場における工程やモノ、起こっていることを起点に改善を進め、課題を解決していく考え方を指します。

リースは、小さな実験を何度も繰り返しますことを奨励しています。起業家はできるだけ早く「実行可能な最小限の製品」を作成し、消費者とのテストを開始する必要があります。次に、ビジネスモデルのあらゆる側面をテストし続ける必要があります。彼は、繰り返し行われるスプリットテスト(A/Bテスト)を推奨します。これは、広告から取得されたテクニックであり、同じ製品のわずかに異なるバージョンを異なる顧客グループでテストして、どれが最も効果的かを確認します。

もうひとつ、リーンスタートアップの源流として考えられているのが、リーンソフトウェア開発です。トヨタ生産方式の原則と実践をソフトウェア開発ドメインに翻訳したものです。「ムダの徹底的な排除」を基本理念とし、最初から正しく計画・決定すること、仕事は分割・個別管理されるべきことを否定し、非中央集権的体制、学習と改善、協調と連携を前提としたものになっています。

リーンソフトウェア開発という用語は、未邦訳の書籍『Lean Software Development: An Agile Toolkit』でメアリー・ポッペンディーク(Mary Poppendieck)とトム・ポッペンディーク(Tom Poppendieck)によって定義づけられました。