豊富な市場経験強み、金融危機の修羅場も-三井住友銀の福留新頭取

(ブルームバーグ):三井住友銀行頭取が6年ぶりに交代し、高島誠頭取の後任に福留朗裕専務の昇格が決まった。旧三井銀行出身の福留氏は市場部門が長く、海外経験も豊富だ。持ち株会社三井住友フィナンシャルグループが戦略立案し、銀行が執行する役割分担の中で、福留新頭取は海外部門の一段の強化や銀行ビジネスモデルの変革に取り組むことになる。

福留氏は1985年に旧三井銀に入行し、市場資金部長や名古屋法人営業本部長などを歴任。現在は、海外部門の共同責任役員を務めてる。名古屋本部長の後に一度退任し、2018年には同行がメインバンクとなっているトヨタ自動車の金融子会社トヨタファイナンシャルサービス社長に転じ、21年に舞い戻った。

三井住友銀からトヨタファイナンシャルへの移籍は初めてのケースで、同行とトヨタの強い関係を示す異例の人事として、金融界の注目を集めた。

欧米アジア含め市場部門で19年

市場部門で19年を過ごしており、ロンドン、香港、上海、ニューヨークで市場業務に携わった。香港ではアジア通貨危機、ニューヨークではリーマン危機に直面し、市場激震の修羅場を乗り切った経験を持つ。

世界的に金融環境が大きく変わり、日本も金利上昇局面へのシフトが現実味を帯びる中での登板となる。市場部門では資金調達と運用の両面で難しさが増しており、豊富な市場経験を生かせるのか、早速その手腕が問われることになる。

高島現頭取は国際部門が長く、三井住友銀の海外展開の強化に務めた。アジアなどで現地金融機関への出資を進めたが、福留新頭取は収益化の道筋を作り上げることも課題となる。

国内では銀行ビジネスモデルの高度化にも取り組まなければならない。すでに、リテール分野では銀行とカード事業を担う三井住友カードが連携し、決済ビジネスなどでのデジタル化が一足先に進んでいる。今後は、法人営業部門でのデジタル化による効率的な営業・組織体制をどのように構築していくのかという大きな変革を実行に移す必要がある。

ポスト分け合うかたちに

三井住友FGは、持ち株会社の会長・社長、銀行の会長・頭取が中枢4ポストとして位置付けられ、旧住友銀行と旧さくら銀行(三井銀)で分け合ってきた。

昨年、旧三井銀出身の宮田孝一銀行会長が急逝し、旧住友銀出身の国部毅FG会長が銀行会長も兼務したため、4ポストすべてを旧住友銀出身者が占める事態となっていた。今回の人事で、引き続き旧行で分け合うかたちとなった。

By 布施太郎

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