WeWorkの苦境は「オフィス回帰」が幻想だと物語る：Lionel Laurent ［ブルームバーグ・オピニオン］

(ブルームバーグ・オピニオン) -- WeWorkはうまくいっていない。またもや。かつて470億ドルの価値を持ち、オフィスをパーティー会場にしようとしたフレキシブルワークの新興企業は、数日の間にCEOとCFOを失った。株価は上場廃止になりかねないレベルまで下落している。多くの職場が、ラップトップ層をオフィスに呼び戻すために「すごい」要素を求めている今、これは教訓的な話だ。

WeWorkの問題は、キャッシュバーンや高額の負債など、以前から存在していたものだ。新しいのは、フレキシブルなオフィスが好まれるはずのコロナ後の奇妙な概日リズムの中で、WeWorkが輝けないようだということだ。Alphabet Inc.のGoogleからドイツ銀行まで、誰もが当分の間「ハイブリッド」化し、リモートワークもオフィスも完全には勝てない状況にある中、WeWorkはいまだに収支を合わせることができないでいる。第1四半期の稼働率は73%で、通期目標の76%を下回っている。

同社は、他のオフィス同業者と同様に、脆弱な存在に見える。仕事の未来についての報道や、会議後にマティーニを飲むための屋上バーのような新しい設備はあっても、ホワイトカラーの仕事の世界では、金利上昇、レイオフの増加、技術の縮小に対処するための魔法のような方法はないのだ。Bloomberg IntelligenceのArnold Kakudaは、オフィス回帰の動きは「もう限界だ」と感じている、と述べている。Badgeのデータでは、米国のいくつかの都市圏で稼働率が50％前後となり、横ばいになっていることが指摘されている。

また、オフィスでの楽しみを増やすことが効果的だと主張する人々にとって、WeWorkの苦境はそうではないことを示唆している。2月に発表されたBloomberg Intelligenceの調査によると、若い労働者はすでにオフィスでのネットワーク作りに熱心で、解雇されることを懸念しているため、年配の労働者が最も柔軟に仕事に適応しており、55～65歳で雇用主を変える割合が増えている。また、カクテルではなく、通勤が圧倒的に問題であり、回答者の3分の2が高い交通費がオフィスに行くのを躊躇させると答えていることも判明した。

JPMorgan Chase & Co.のジェイミー・ダイモンなどは、在宅勤務を「ハリウッド・スクエア」による経営と呼び、批判しているが、オフィス好きな管理職と在宅のGen-Zワーカーの考えは相違する。もし、都市や職場が本当に人々を職場に呼び戻したいのであれば、パーティーをする場所ではなく、働きやすい場所を作るべきかもしれない。公共交通機関の充実、手頃な価格の不動産、より静かなワークスペース、より高速なインターネットがあれば、状況は一変する。平均的な知識労働者は、仕事を中断された後、軌道に乗るまでに23分もかかるという研究結果を考えると、誰が卓球台の音を聞きながら仕事をしたいと思うだろうか？

WeWorkは、少し遅かったかもしれないが、このメッセージを受け止めたようだ。パリの中心部に最近オープンしたWeWorkでの生活について、新興企業の入居者であるMyTrafficのマーケティング最高責任者、ジュリアン・トオリスに話を聞いたことがある。彼は、アダム・ニューマンの発案とは思えない「勉強熱心」な雰囲気で、主な魅力は、ハッピーアワーのカクテルよりも、リースの柔軟性、清掃や光熱費の一括負担、中心部にあることだと言った。

トオリスによれば、欧州のオフィスの約20％がコワーキングスペースになる可能性があるとのことである。しかし、WeWorkの株価が急落していることからもわかるように、オフィスへの回帰は決して楽なものではないことが証明されている。

WeWork’s Woes Show Return-to-Office Is No Party: Lionel Laurent

© 2023 Bloomberg L.P.

翻訳：吉田拓史、株式会社アクシオンテクノロジーズ